2016 Fiscal Year Research-status Report
医療の質の向上に役だつ医療保険制度のあり方に関する基礎的研究―日本とドイツを例に
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16K03338
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田中 伸至 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (80419332)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医療の質の確保 / 医療制度 / 医療保険制度 / 医師の資格制度 / 医療の質マネジメント / 診療報酬 / 診断治療方法 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度においては、ドイツの医療保障法制におけるい医療の質の確保に関する制度について文献調査を行った。ドイツの公的疾病保険制度のみならず、これと密接に関係する医師の資格法制や病院法制などの諸制度も含めて関係法令などを読み解き、医療の質の向上の観点からコンステラツィオーン(全体的な位置関係)を把握する作業を行った。調査対象としたサブシステムは、医療職の資格制度、医療機関の開設・運営規制、医療職や医療機関を公的医療保険の中に組織化する制度、診療報酬や医療機関のファイナンスのための制度、新たな診断治療方法を保険適用する際の審査制度、既存の診断治療方法を再審査する制度、臨床評価指標を用いた医療機関の自主管理の仕組み、医療安全・医療事故対応システムなどである。 当初の調査結果については、医療保障に関心を持つ社会保障法研究者で組織する「世界の病院研究会」第5回研究会(2016年5月29日、京都市)において、報告した。この際、出席者の方々から質疑をいただくとともに、貴重なご助言をいただいた。 その後、引き続き、ドイツの専門雑誌(Medizinrecht, Neue Zeitschrift fuer Sozialrechtなど)に掲載された医療の質の確保に関する諸論文などの資料を収集して読み込むなどの調査作業を進めた。年明けからは、これらの調査結果を基盤として、ドイツの医療の質の確保に関する制度を描写し、その構造や特徴を明らかにする論文を作成する作業を行っているところである(現在、執筆中)。同論文は、2017年10月頃公刊予定の『法政理論』(新潟大学法学会紀要)に掲載する予定である。この成果物によって、医療の質の確保に関する制度を構成する多様なサブシステムの間の連関や位置関係の一例を明らかにできるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツの医療法制における医療の質の確保に関する制度の調査はほぼ終了しており、調査結果のとりまとめ=論文作成に若干の時間を要してはいるが、特段の障壁や困難もないことから、全体としては、概ね順調に進展していると判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり、ドイツの医療法制における医療の質の確保に関する制度の調査結果を論文にとりまとめ、公刊する予定である。 その後、医療の質に係る法制度の下で関係に機関により発出されている個別的な指針を読み解き、具体的な診療行程における役割を探求する。この作業を通じて、プロセス評価やアウトカム評価を組み込んだ指針の規制的手法としての機能、他の医療制度構成要素との構造的連関などを調査する。調査に当たっては、文献調査の他、現地調査により実際の運用状況や関係者の見解などもヒアリングしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
旅費などを使用しなかったことなどのため、次年度使用額が生じたとみられるが、ほぼ誤差の範囲内である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度請求分への若干の上乗せとして、書籍購入のための物品費に充当するなど、しかるべく使用したい。
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