2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03340
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
名古 道功 金沢大学, 法学系, 教授 (80172568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 真衣 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (50532321)
濱畑 芳和 立正大学, 社会福祉学部, 准教授 (60581642)
谷口 洋幸 高岡法科大学, 法学部, 教授 (90468843)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 性的少数者 / LGBT / 性自認 / 性的指向 / 労働法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、企業調査と文献研究を中心とする研究、そして海外調査の一部(アメリカ)を実施した。企業調査では、渋谷区と共同して、性的少数者に対する施策が進んでいる10社のヒアリングを行った。ここで得られた成果は以下の通りである。第一に、ほとんどの企業において、すでにダイバーシティ施策に取り組まれており、性的少数者に対する施策はその一環であるので、スムーズに進められた点であり、「企業文化」が重要である。第二に、企業による施策では、就業規則に平等取扱いが規定され、また異性婚同様の福利厚生(慶弔祝い・見舞金、休暇など)や支援体制を充実させている。第三に、採用面接等で用いるエントリーシートには、男女記載欄を無くしている企業が見られ、人権に配慮されている。第四に、社長などのトップの支援がある企業では、積極的な取組みがなされており、その重要性が確認された。第五に、従業員だけではなく、顧客サービスでも性的少数者に配慮されており(例、同性パートナーにも異性パートナーと同じサービスを提供する)、注目される。他方、課題も提起された。第一に、企業施策を整えても、福利厚生などの利用者が少ない点である。先進的企業においてもカミングアウトには躊躇する状況にあるためといえ、これは、社会全体での理解促進と併せて検討しなければならない。第二に、企業独自には解決できない課題として、社会保険や相続が挙げられる。具体的には、労災での死亡による遺族補償金を同性パートナーは受領できない、また在職中の死亡による退職金の受領者をだれにするかなどであり、これは法的解決が求められる。 海外調査では、LGBT関係団体におけるヒアリング調査を実施し、先進的取組みの実情が解明された。このほか、それぞれの専門に基づき文献研究が行われ、研究会でその成果が報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は企業調査を多く実施し、今後の研究遂行の当たって充実した成果を得られた。 しかし、予定していた海外調査の一部は、諸事情から次年度に先送りすることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年は、各自の研究分担に従って、研究成果をまとめるとともに、これを踏まえて総括研究を実施する。また前年度に実施できなかった海外調査(ドイツ)を9月に行い、有益な成果を得る。 総括研究では以下の点を重視する.第1に、「性的指向」を理由とする差別禁止規定の新設に際して生じる立法政策・法理論及び人事政策を解明する。第2に、労基法3条の差別事由への迫加、均等法改正、あるいは性的マイノリティに対する差別一般禁止法の制定との選択肢が存するが、実効性、適用範囲、法的整合性等を考慮して決定する。第3に、いかなるケースが差別に該当するかであり、これは、憲法14条1項の趣旨に照らしつつLGBTそれぞれの特性を踏まえて検討する。第4に、働きやすい職場環境の整備である。第5に、性的マイノリティの就労にあたって、人事や施設面での対応か求められるので、障害者雇用促進法における合理的配慮などの議論を参考にしつつ、実務的な提言を行う。以上を踏まえて、性的マイノリティの労働法及び社会保障制度(年金・医療等)上の政策・立法論、並びに人事政策に関わる具体的課題を提起する。
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Causes of Carryover |
今年度、海外調査(ドイツ)を予定していたが、ドイツでは同性婚を認める法律が2017年8月に施行されたばかりであり、その実情を調査するには一定の期間を置いた方が有益な成果を得られると考えたため、次年度に延期した。本年9月に実施する予定であるので、最終年度の総括研究には支障はない。
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Research Products
(5 results)