2016 Fiscal Year Research-status Report
ひとり親家庭に対する経済的・社会的支援の日本・スウェーデン比較法研究
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16K03341
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中野 妙子 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50313060)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会保障法 / 遺族年金 / スウェーデン |
Outline of Annual Research Achievements |
スウェーデンの遺族年金は公的年金保険の一部に位置づけられる。公的年金制度は,職業を問わず全ての者を包括する普遍的制度である。1990年代までは,1960年の付加年金改革による,定額の国民年金に所得比例の付加年金を上乗せする二階建ての制度であった。1998年の抜本的な老齢年金改革により,今日では,保険料で賄われる所得比例年金を全額国庫負担の最低保障年金が補う構成になっている。遺族年金は,児童を対象とする遺児年金,配偶者を対象とする調整年金および旧制度の経過措置である寡婦年金から構成される。本研究では,調整年金を主な対象とした。なお,スウェーデンの遺族年金制度では,父母や祖父母などの配偶者以外の成人遺族に対する保障は設けられていない 。 スウェーデンでは,かつては男性片働きモデルに基づき女性配偶者にのみ遺族年金を支給したが,1988年改革によって男女平等かつ原則1年間の有期給付へと改められた。非常に大胆な改革であるが,経過措置により長い時間をかけて新制度への移行が行われている点に留意が必要である。 今日の調整年金は,就労可能年齢にある者は男女ともに原則として就労による自立が可能であることを前提に,就労所得に対する補完として位置付けられている。また,老齢年金などの他の社会保障給付との間での役割分担も明確である。中央統計局の統計によれば,スウェーデンの20~64歳人口の就労率は男性82%,女性78%であり(2015年),女性の就労率は男性とほぼ同水準である 。もっとも,男女の就労構造や賃金の格差は存在し,母子世帯の経済状況が厳しいことも指摘される。しかし,このような問題への対応は労働市場政策や他の社会保障給付が担うべき役割であり,遺族年金の役割ではないと考えられているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度はスウェーデンの遺族年金制度について調査研究を行い、研究成果の一部について学会発表なども行った。研究は、おおむね当初の研究計画に沿って進行しているといってよい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,平成28年度の研究によって得られた成果を基盤として,スウェーデンにおける遺族年金制度の研究を継続するとともに,児童手当および生計扶助に調査対象を拡大する。児童手当については,立法資料等に基づき支給対象者や支給要件,給付水準等の制度設計が依って立つ理念を調査し,児童手当と遺族年金がひとり親家庭に対する経済的支援としてどう関連付けられてきたか,あるいは関連付けられていないのかを明らかにする。生計扶助については,母子家庭が生計扶助受給者の大きなグループを形成することから, 児童手当や遺族年金が母子家庭の貧困の予防施策として果たす機能の効果にも留意しつつ,児童手当・遺族年金との相互関係を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
次年度に約10万円を繰越すこととなった。これは2017年3月に行ったスウェーデンでの現地調査が、他大学からの依頼による出張と合わせて行われたため、旅程の後半の費用のみを本助成金から支出することとなり、航空券代の負担が見込みよりも減ったことによるところが大きい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の研究計画に沿って精力的に研究を遂行し、可能な範囲で、国内外での情報収集や研究成果発表の機会を増やすことで、繰越額を含め予定通りの使用に努める。
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