2018 Fiscal Year Research-status Report
ひとり親家庭に対する経済的・社会的支援の日本・スウェーデン比較法研究
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16K03341
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中野 妙子 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50313060)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会保障法 / 子育て支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は主として、ひとり親家庭を含む子どものいる家庭に対する子育て支援の現状と課題について研究を行った。 2012年に成立した子ども・子育て関連3法による児童福祉法改正により、市町村の保育実施義務の対象となる児童の範囲が拡大された。また、子ども・子育て支援新制度では、支給認定と利用する施設・事業者の決定が区別され、子どもが置かれている環境から客観的に保育ニーズが認められれば、支給認定を受けられる仕組みとなった。以上のような制度改革の効果として、保育サービスの利用児童数・利用率の増加がみられる。保育サービスの供給面では、2012年改正による認可制度の改善、家庭的保育事業の実施主体の拡大、および小規模保育事業等の法制化により、多様な事業者の参入と、それに伴う保育サービスの量的拡大が進んでいる。 他方で、保育の受け皿が拡大したにもかかわらず、待機児童巣は依然として高い水準にある。その背景としては、女性の就労の増加や、施設整備による潜在的な保育需要の顕在化、対象児童の範囲拡大やニーズ判定の客観化による需要の顕在化などが考えられる。子ども・子育て支援法は地域型保育の対象を原則として3歳未満児に限定することで低年齢児の待機児童問題の解消を図ろうとするが、需要の増大に追いついていないのが現状であるうえ、3歳児に保育所等に入所できず行き場を失う「3歳の壁」の問題も存在する。また、政府は、2016年改正で法制化された企業主導型保育事業を保育所に準じる受け皿として位置づけている。しかし、企業主導型保育事業はあくまで認可外保育施設であり、利用者負担や行政による監督の程度に差があること、認可外保育施設の認可化を推進するという子ども・子育て支援新制度の本来の趣旨に反しうること、といった問題が存在する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、日本の子ども・子育て支援制度について調査研究を行い、その成果を雑誌論文として発表した(後掲)。また、スウェーデンでの現地調査を行い、社会の変化が同国の福祉制度に与える影響についての聞き取り調査と資料収集を行った。研究はおおむね、当初の研究計画に沿って進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、ここまでの研究によって得られた成果を基盤として、スウェーデンにおける遺族年金、児童手当、生計扶助についての研究を継続する。また、平成30年度に収集した資料を基に、同国の社会の変化(人口構造や家族構造の変化、移民の増加など)が児童に関わる社会保障制度にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目指す。 並行して、日本法についても研究を継続し、児童福祉をはじめひとり親家庭に係る施策に関わる判例の収集と分析を行い、現在の制度の構造とその問題点を明らかにすることを目指す。 今年度は研究の最終年度であるため、研究成果をまとめ、国内外の研究会で積極的に発表していく。
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Causes of Carryover |
年間を通して節約に努めた結果、次年度に向けて10万円超の繰り越しが生じた。次年度も引き続き、計画的かつ合理的な執行に努める。
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