2020 Fiscal Year Annual Research Report
A Comparative Study of Economic and Social Support for Single Parent Families in Japan and Sweden
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16K03341
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中野 妙子 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50313060)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会保障法 / スウェーデン / 遺族年金 / 児童福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.遺族年金ついて スウェーデンでは、配偶者に対する遺族年金制度は、1988年の改革によって男女平等かつ原則1年間の有期給付(調整年金)へと改められた。調整年金は、就労可能年齢にある者は男女ともに原則として就労による自立が可能であることを前提とする。同国においても、男女の就労構造や賃金格差は存在し、母子世帯の経済状況が厳しいことも指摘されているが、これらの問題への対応は労働市場政策や他の社会保障給付が担うものと整理されている。同国の遺族年金改革は非常に大胆な改革であるが、経過措置により長い年月をかけて新制度への意向が行われている点に留意が必要である。これに対し、日本の遺族年金制度においては、明確に女性を優遇する支給要件が維持されている。しかし、性別に基づく区別を解消することも立法府の裁量の範囲に含まれるのであり、経過措置に十分な時間をかけ、社会の変化を促進するような法改正も検討の余地がある。 2.子育て支援について スウェーデンにおける女性の就労率の高さの背景には、脱家族主義・普遍主義を掲げた社会サービスの発展がある。介護や保育の公的な保障が、女性を家庭責任から解放するとともに、女性の就労の場を提供してきた(もっとも、このことが、男女の就労構造の差に繋がる)。保育は学校教育に位置づけられ、親が就労・就学等をする1歳以上の児童に対する保育の提供が地方自治体の義務となっている。日本においても市町村が保育実施義務を負っており、2012年の改革によって対象児童の範囲が拡大され、客観的な保育ニーズが認められれば支給決定を受けられる仕組みとなった。効果として、保育サービスの利用数・利用率の増加が見られる一方、待機児童数は依然として高い水準にある。背景としては、女性の就労の増加に加え、施設整備や対象児童の拡大、ニーズ判定の客観化による潜在需要の顕在化が考えられる。
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