2017 Fiscal Year Research-status Report
デジタル産業における不可欠施設理論の現代的展開と支配的地位の濫用規制の再構築
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16K03346
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
柴田 潤子 香川大学, 法学部, 教授 (90294743)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 市場支配的地位の濫用規制 / インターネット / Google / Facebook / 情報と競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
欧州委員会は、2017年6月、Googleに対して、制裁金を課す命令を決定した。Googleは、総合検索における支配的地位を濫用し、Googleの比較ショッピングサービスである、他のGoogleプロダクトに不当に利益を与えていることが理由であり、この決定を整理分析して研究会で報告をした。当該決定では、市場を総合検索サービス及び比較ショッピングサービスとして、総合検索サービスが経済活動である事を明らかにした。プラットフォームの市場支配力の認定に関して、インターネット経済の特殊性が「伝統的」市場支配力の認定にどのような影響を及ぼすかという問題が提起される。本件では、総合インターネット検索についての市場において、検索利用者に対するサービス市場に限定しており、市場シェアが90%以上であること、新規参入・拡大の障壁、利用形態(マルチホーミング)等が重要な要素として明確にされた。濫用行為については、従来の判例に基づき、市場参加者の能率を基礎として「能率競争」を基準に濫用行為に当たるかどうかが検討されている。具体的にはGoogleの一次市場(総合検索)における支配力を隣接市場(二次市場)に拡大したことを濫用行為の理由としており 、いわゆるレバレッジ(支配力のトランスファー)を捉えていると理解でき、かかる行為類型の濫用行為として理論を構築する必要がある。さらに、2016年、カルテル庁は、データ保護違反による市場支配力の濫用の疑いを理由にした手続きを開始した。情報力が支配的地位の源泉になることが明らかとなり、デジタル社会における情報力が競争に与える影響については、競争者に与える排除効果のみならず、利用者等に対する搾取的な問題が重要視されつつある事が明らかとなった。その際、かかる濫用行為が2つの市場にまたがっているという事情に着目し、我が国における私的独占規制の在り方を再考する手がかりとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年年度、「情報と市場支配力-ドイツ競争制限防止法第9次改正をめぐる議論を中心に」、2017年度は「Google Search (Shopping) 」をテーマに報告をする機会を得た。さらに、2017年の日本経済法学会では、独占禁止法70周年の大会において「私的独占」について報告を行った。そこでは、私的独占の過去の運用を分析し、私的独占帰省が持つ意義と、今後の展望を示す事を試みた。背景として欧州で進むデジタルオンラインプラットフォームに対する規制の進展があり、かかる分野におけるドミナンスと濫用行為についての理論を引き合いに出し、私的独占規制についても、同様な規制の方向性の必要性を指摘する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
残された課題である、Facebookケースにみられる情報力を背景にした搾取の理論を整理する。従来の搾取のケースを総括し、現在問題となっているオンラインプラットフォームにおける情報力を源泉とする支配力の捉え方、濫用行為の理論を明らかにしたい。日本の私的独占規制が、いわゆる搾取規制において一定の役割を果たしうるのか、その場合の理論を検討し、必要あれば、優越的地位の濫用との対比の上で、搾取規制の在り方を考察する。排除行為については、引き続き、2つの市場を前提とした排除行為の規制について理論の整理を試みる。Googleケースは継続しており、アンドロイドにおける濫用行為や広告との関係での濫用行為の問題が今後の課題となる。排除行為のみならず、搾取的な濫用行為の可能性も含んで問題視されるかどうか、排除・濫用が混在する濫用行為の検討等、現在のデジタル社会に応じた規制の在り方を考察していく。
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Causes of Carryover |
来年度、デジタル経済における法問題に関してたくさんの発刊が見込まれるので、そちらで対応する。
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