2017 Fiscal Year Research-status Report
経済法における中間的処理制度のあり方に関する理論的検討
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16K03356
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
瀬領 真悟 同志社大学, 法学部, 教授 (90192624)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会法学 / 経済法 / 中間処理制度 / 確約決定 / EU競争法 / 争訟可能性 / 損害賠償制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、EU競争法における確約決定制度を研究対象にした。 第一に、研究実施計画(以下、計画とする)の第1点に関連し、EU司法裁判所判決で、確約決定の取消範囲が狭く解され、担当部局である欧州委員会の広範な裁量権の容認や当事者による自発的申し出に基づく決定の性格などに依拠すること、2つのEU司法裁判所判決を通じてこの点はかなり確立したものとなっていることが確認できた。確約決定の争訟可能性は極めて狭いものとなっている。 第二に、計画の第2点に関連して、昨年の研究では、特定分野での確約決定が多用されている傾向が確認されたが、それはその分野の特性(規制産業的性格など)に依拠するものであり、そうではない分野(例:半導体、IT分野)については近年確約決定ではなく違反決定が用いられつつあることが確認できた。この点、事案の事実と、問題となる行為による反競争効果除去や競争回復措置との関連性が、産業特性や案件の特定事実を反映するものであることが確認できた。この点の確認は、昨年検討が十分できなかった第2点を補うことにもなった。 第三に、計画の第3点については、EU加盟各国で、競争法違反に対する損害賠償制度の整備が図られ、それに基づく訴訟も展開しつつあることが確認された。しかし、確約決定に係る訴訟展開は確認できず、提起されている訴訟もいまだ数は多くないものであった。ただ、この点に関して、昨年11月に、EUレベルでなされた確約決定が、加盟国(の国内法秩序)に対してどのような効果を持つのかについて新たな問題を提起するEU司法裁判所判決がなされている。EUレベルで確約決定がなされていても、加盟国では別の法的処理の余地を持つ可能性が示されており、そうであればEUレベルでの確約決定と加盟国内での被害者救済促進制度との連動性が薄まるという効果がもたらされる可能性もある点が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画で想定した各項目について満遍なく研究を遂行し、第1点と第2点については新しい知見などが得られている。 ただし、いくつかの項目(特に、第3点目の被害者救済促進機能の検討)については、実態における制度展開などの解明を含めてさらなる検討を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度の研究内容の補充研究を行いつつ、昨年・一昨年の研究成果を踏まえて、実効性・効率性と公正性・公平性のバランスの取れた制度構築と運用のためにどのような制度構築や運用システムが望ましいかを探る。またその探求の適切性を補完するためにEUとは異なる制度を採用する米国法の制度を参照しつつ研究を行う。研究手法としては、昨年までと同様文献研究を行う。この有効性は、昨年度までの研究で確認済であるが、昨年度の研究では関連研究者からのヒアリングから有益な情報を得ることも多かったので、必要に応じて欧米の研究者との意見交換や現地での研究大会への参加により有意義な知見を得ることを試みる。
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Causes of Carryover |
当該年度及び次年度利用予定の研究文献の発刊・発送遅延等により予定していた予算執行ができなかったため。
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