2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03359
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
高倉 新喜 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (50301867)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 刑事再審制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、治罪法(明治13年太政官布告第37号)における再審制度の立法過程、旧々刑事訴訟法(明治23年法律第96号)における再審制度の立法過程、旧刑事訴訟法(大正11年法律第75号)における再審制度の立法過程、および現行刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)における再審制度の立法過程、ならびにこれらに関連する学説および判例を分析することによって、現行刑事訴訟法における再審制度の歴史的意義と基本構造を解明することである。 平成29年度は、本研究の目的の一環として、旧刑事訴訟法における再審制度の立法過程と現行刑事訴訟法における再審制度の立法過程を明らかにするための調査・収集・整理を行った。そして、旧刑事訴訟法と現行刑事訴訟法における<1>再審開始決定とそれに伴う再審請求人の身柄の取り扱い、<2>再審開始決定に伴う刑執行停止決定に対する抗告の可否等を検討することを試みた。 旧刑事訴訟法における再審制度は、ドイツ法の影響を受けて不利益再審を導入したが、これは、治罪法と旧々刑事訴訟法における利益再審の個人主義的正義に対する反動であった。旧刑事訴訟法においては、結局は「疑わしきは(有罪判決の)確定力の利益に」判断され、誤判救済の要請は、当時の位置付けとしては小さいものとならざるを得ないことが明らかになった。 現行刑事訴訟法になると不利益再審は廃止され、利益再審のみが認められるようになったものの、1975年の最高裁白鳥決定までの再審請求事件では「疑わしきは(有罪判決の)確定力の利益に」判断され、誤判救済の視点では、再審は「開かずの門」であった。同決定以降は、再審で無罪判決が下される事例が増えてきたものの、上記<1>から<2>の論点が明確に意識され議論されるようになったのは最近である。旧刑事訴訟法の不利益再審の影響が根強くあることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現行刑事訴訟法における再審制度の利益再審は、現行憲法39条を踏まえているが、このことは、a.治罪法における再審制度と旧々刑事訴訟法における再審制度の利益再審を復活させただけのものなのか、b.アメリカ法の影響を受けた現行憲法39条の制定により、フランス法の影響を受けた治罪法と旧々刑事訴訟法の利益再審や、ドイツ法の影響を受けた旧刑事訴訟法の不利益再審から断絶した異質の利益再審なのか、c.aとbの両方の要素が取り込まれた利益再審なのか、について、未だ明らかにできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度と平成29年度の研究成果の上に補充・追加するかたちで、資料の調査・収集・整理をした上、分析・検討を行う。そして、現行刑事訴訟法における再審制度の歴史的意義と基本構造を解明する。
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Causes of Carryover |
(理由)研究の進捗がやや遅れて、予定していた書籍を購入できなかったため。
(使用計画)平成29年度に購入できなかった刑事訴訟法および立法過程に関連する書籍の購入に当てる。
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