2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03361
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐伯 仁志 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (10134438)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 終末期医療 / 医事法 / 医事刑法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、終末期医療における刑法の役割について、総合的研究を行おうとするものであるが、平成28年度においては、研究の初年度として、第1に、我が国の終末期医療の問題について、判例・文献を収集して、整理・検討を行った。また、厚生労働省の終末期医療に関する委員会において長年にわたって中心的な枠割りを果たしてきた町野朔氏から、終末期医療への国の関わり方に関するこれまでの経緯と今後のあり方について話を聞くとともに、本研究の今後の進め方についてもアドバイスを得た。第2に、比較法的研究としては、アメリカ、ドイツ、イギリスなどにおける終末期医療に関する文献・判例を収集して、最新の状況を把握することにつとめた。その結果、アメリカについては、自殺介助を認める州が増えつつあり、また、現在はまだ認めていない州においても、これを認める法案が提出されているところがあり、賛成派と反対派の間で活発な議論がかわされていることがわかった。アメリカの状況については、我が国においても、すでに、連邦最高裁の判例や、オレゴン州等の状況が紹介されてきているが、最新の状況については必ずしも紹介が十分とはいえないので、平成28度の後半では、アメリカの状況に特に力を入れて研究を行った。第3に、理論的問題として、積極的安楽死と消極的安楽死の差別化に関して、作為と不作為の区別やいわゆる二重効果(double effect)の理論をどのように考えるかが問題となっており、この点に関する検討もはじめた。これらの研究については、未だ論文として発表するには至っていないが、近い将来における発表に向けて準備を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、次年度以降の研究の基礎を固めるため、日本の状況を把握するとともに、諸外国の法制度のうち、特に日本に参考となる国を見つけ、その基本的な状況を把握することを計画していたが、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、初年度の研究をさらに深めるとともに、比較法的研究については、現地調査も含めて研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
文献資料について、関連する判例および法律論文等が膨大であって、高額の医学書や外国書物の購入が予定よりも進まなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文献の購入をさらに進めていきたい。
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