2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03361
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐伯 仁志 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (10134438)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医事刑法 / 終末期医療 / 安楽死 / 尊厳死 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度においては、我が国の法制度及び終末期医療の実態に関する研究を継続しながら、比較法的研究に本格的にとり組むという計画に基づき研究を進めた。この間、厚生労働省に設置された「人生の最終段階における医療・ケアの普及・啓発の在り方に関する検討会」のメンバーとして議論に参加し、日本の終末期医療の現状に関する最新の情報を得ると共に、ガイドラインの改定作業に関与した。新ガイドラインは、アドバンス・ケア・プランニングの考え方が取り入れられていることが特徴の一つであり、この点についても研究を行った。比較法的研究としては、本年度は、アメリカの研究として、日本ですでに紹介されているアメリカ連邦最高裁の判例以後の各州の動きについて研究を行った。これに加えて、近時、医師による臨死介助を禁止する刑法の規定が最高裁判所で違憲とされ、これを受けて刑法改正が行われたカナダの状況についての研究に力を入れて研究を行った。カナダの状況は、司法と立法の関係を考える上できわめて興味深いものであり、研究成果を論文にまとめた(近々公表される予定である)。海外の実態調査としては、終末期医療の在り方に法文化の与える影響が大きいことから、同じ東アジア文化圏に属する中国の調査を計画し、上海市の大学付属病院の医師、医事法を専門とする弁護士、学者等にインタビューを行い、その実態を調査するとともに、今後の終末期医療の在り方について意見交換を行った。また、上海華東政法大学において、日本の終末期医療の現状について、司法、立法、行政の関係を中心に、報告を行い、参加者と議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度においては、我が国の法制度及び終末期医療の実態に関する研究を継続しながら、比較法的研究に本格的にとり組むという計画に基づき、おおむね計画通りに研究を進めることができた。比較法的研究については、平成29年度には、近時大きな動きのあったカナダの状況についての研究に力を入れてこれを行い、その成果を論文をまとめる作業を行った。論文は、近日中に公刊予定である。実態調査については、終末期医療の在り方には法文化の与える影響がとくに大きいことから、東アジア文化圏に属する中国を優先して行うことにして、上海において、医療関係者、法律実務家、研究者等へのインタビュー調査を行うとともに、日本の状況について報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、これまでの研究を継続すると共に、研究のとりまとめに向けた作業を行う予定である。
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Causes of Carryover |
実態調査先において中国の調査を優先し旅費が予定よりも少なかったため。本年度さらに実態調査を行う予定である。
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