2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03364
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮木 康博 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50453858)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 証人保護プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究題目「 秘匿捜査の法的規律と手続関与者の保護プログラム 」のうち、とくに「手続関与者の保護プログラム」に焦点をあてて研究した。現在のわが国の証人保護関連規定を体系的に整理したほか、証人保護プログラムの発祥の地とされる米国について、調査を行った。その過程として、とりわけ、意識をしたのは、新法の捜査公判協力型の協議合意制度や刑事免責である。同制度は、まだ施行されていないものの、その実施に際しては、証人保護制度の充実なくして実効性あるものとしての機能が期待できるかを調査する必要性を感じたためである。そこで、わが国とは法制度は異なるものの、取引的制度を導入し、かつ、それと対になるものとして、発展させてきている米国の証人保護プログラムについて概観するとともに、わが国に導入する際の法的要点や考慮要素について考察を加えた。まだ、研究途中であるが、現状における研究成果の一部として、2016年10月1日に「証人保護プログラムの制度設計」と題した学会報告(日本刑法学会名古屋部会)を愛知学院大学で行い。学者・法曹実務家と議論を行ったほか、そこでの議論を含めて検討を加えて、2017年3月に椎橋隆幸先生の退職記念論文集に論文を寄稿し、公表した(法学新報123巻9・10号333-358頁)。ここでの研究成果は、今後のわが国における議論の基礎的研究として、意義をもつものと考えている。また、証人保護について、実務の取扱いなどについてヒアリングを行い、現行法の下での対応とその限界について研究会で議論を行った。この点は、今後さらに研究を進め、形にしたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にしたがって、証人保護プログラムについて、学会報告と論文を公表した。秘匿捜査の法的規律については、膨大な量にのぼることが予測され、いまだ公表に至ってはいないが、資料集数・検討項目の整理は進んできており、新年度での公表を検討できる段階にまできている。
|
Strategy for Future Research Activity |
証人保護プログラムについては、まだまだ検討すべき課題も残されているが、今年度からは、秘匿捜査の法的規律に関する研究を中心に据えて研究する予定である。具体的には、システマティックに制度的枠組みが構築されつつある米国を中心に、そもそも秘匿捜査として、いかなる手法が想定されているのか、それに伴うそれぞれの侵害法益の考え方、実施に際しての内部的規律のあり方などを中心に段階的に研究を進め、各種研究会で報告をするほか、実務家へのヒアリングを通して、なかなか顕在化しない取り組みについても整理したいと考えている。そして、膨大な量ではあるが、まとまりのできたところで、記念論文集や紀要などで論文の公表をしていく。
|
Causes of Carryover |
開催予定とされていた研究会が流会になった点や購入を予定していた書籍の出版が延期になったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
出版が延期になった書籍の購入および流会になった研究会への出席など
|