2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K03368
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野澤 充 九州大学, 法学研究院, 教授 (70386811)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 業務妨害罪 / 公共の平穏 / 社会法益 / 刑事法制史 / 刑事立法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はドイツやオーストリアに見られる「社会の平穏を害する罪」を現代社会にふさわしい形で再構成し、日本での新たな立法提言の足掛かりとするものであり、そのアプローチは①歴史研究を前提とした比較法研究を行うこと、および②日本における当該加害行為に関する現状の問題分析という2つの側面から構成されている。 平成30年度は、①歴史研究を前提とした比較法研究に関連しては、本研究をさらに発展させる目的で在外研究を行うために、科学研究費国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)から研究助成を受けることが可能になり(「「公共の秩序に対する犯罪行為」の比較法的検討」(課題番号17KK0051))、これに基づいて平成31年度にドイツ連邦共和国・エアランゲン=ニュルンベルク大学のイェーガー教授の下で集中的にドイツの「公共の秩序に対する犯罪行為」に関しての研究を行うことになった。平成30年9月にそのための準備としてドイツに渡航し、イェーガー教授との在外研究に関する打ち合わせを行い、あわせてエアランゲン=ニュルンベルク大学で資料収集を行った。 ②日本における当該加害行為に関する現状の問題分析に関しては、とりわけ研究課題の中心としたい「公務に対する業務妨害罪」に関して、その中でもとりわけ問題があると考えている「警察の通常業務に対する業務妨害罪」について、その理論的問題点を今一度再確認する論考(「虚偽犯罪予告行為と業務妨害罪・再論」法政研究85巻3・4合併号)を発表し、その際に「公務に対する業務妨害罪」が問題となった判例のリストを添付した。日本の業務妨害罪の濫用傾向については、その当罰性の点からの反論を封じる必要があるため、業務妨害罪の立法趣旨の観点からの理論的限定、もしくは当罰性のある行為を業務妨害罪から外すべき利点を刑事立法についての理論的観点で説明する方向性を模索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度においては、①歴史研究を前提とした比較法研究の側面に関しては、ドイツに渡航して資料収集を進めることができただけではなく、平成31年度に予定されている在外研究のための打ち合わせも進めることができたので、研究成果をまとめて公表する段階にまではまだ至らないものの、順調に進めることができているといえる。また②日本における当該加害行為に関する現状の問題分析の側面に関しては、本研究が問題視すべきと考えている「警察の通常業務に対する業務妨害罪の成否」に関して論文を公表することはできた(「虚偽犯罪予告行為と業務妨害罪・再論」法政研究85巻3・4合併号)ので、あとは比較法的視野および理論的刑事立法の観点からの提言を行う方向へとまとめていく予定であり、順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度である平成31年度に向けて、いよいよ比較法的観点からの「社会の平穏を害する罪」の歴史的経緯およびその立法的意義を調査・検討し、日本に新たな領域における刑事立法の提言を行うことで、単純に「刑法解釈論上の業務妨害罪に関する問題点の解決」という「解釈論上の理論提供」にとどまらない、「刑事立法のあり方としての限界線の理論的提示」という、「立法論上の理論提供」をも射程に含めた成果を提供することが方向性として求められると考えている。まずその前提として①歴史研究を前提とした比較法研究の側面に関して、ドイツ等に既に存在している一方で日本に求められるべき処罰規定の内容を明らかにしつつ、それを踏まえて②日本における当該加害行為に関する現状の問題分析という観点から「解釈論で無理に何とかするのではなく、立法論で対応すべき場合」がどのような場合か、そしてどう対応すべきなのかの提言を行うことを目指すべきものと考えている。
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Research Products
(2 results)