2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03371
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
三島 聡 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (60281268)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 警察 / 録音・録画 / 透明性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度前半は、取調べの録音・録画が部分的に実施された事件の弁護人の依頼にもとづき、勾留延長期間満了直前になされた当該被告人の自白の証拠能力についての意見書を作成した。録音・録画がなされた取調べについてはその反訳文で当該の取調べの発問および応答が把握でき、非常に有用であったが、他方で、とくに(その違法性が問われた)初期の警察取調べについては録音・録画がなく取調べ経過全体をふまえて検討することができず、部分的な取調べ録音・録画の不十分さを痛感した。意見書には事件の詳細が記載されているため、意見書そのものを公表することはできないが、取調べの録音・録画時代の自白の証拠能力のあり方を論じているので、訴訟の進行状況も考慮しながら、時期をみて一定の形に整理したうえ公表したいと考えている。 2017年後半は、性犯罪に関する刑法の改正を検討したほか(2018年4月に論稿公刊)、ロンドンとベルファストを訪れ、聴き取り調査をおこなった。ロンドンでは、London市警の外部組織であるMayor's Office for Police and Crime (MOPAC) やLondon Policing Ethics Panel、情報保護に関するNGO、body-worn camera (BWC) の効用に関する実証研究を精力的におこなってきた研究者を訪ね、BWCの利用状況や課題、その効用に関する実証研究の動向等を調べ、ベルファストではPolice Ombudsman for Northern Irelandや人権NGOの事務所を訪問し、政治状況の警察への市民の信頼への影響、BWCの有用性、警察不服申立ての制度の運用状況等について調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大学内での行政的な仕事等で時間をとられ、業績の公表という点では十分ではなかったが、第1に、実際の事件の取調べの録音・録画(の反訳文)全体に接し、録音・録画を通じて当該事件の自白の証拠能力や証明力について具体的に検討する機会が得られ、その内容をまとめることができた。一般に、研究者は、裁判所宛ての意見書や鑑定書を作成するのでなければ、審理中の事件の記録に公式に接することはできない。この点では幸運であった。 第2に、昨年度のアメリカ合衆国での調査をふまえて、イギリスでbody-worn camera (BWC) 等の調査をおこなうことができた。合衆国では、警察活動の透明性の確保からその活動中できるだけ広くBWCを作動させるべきだという意見が強いが、イギリスでは私人のプライヴァシーの保護の観点からより限定的に作動させるべきだとする考え方が非常に強く、今回の調査でも、調査先の研究者やNGOの調査員から同様の考え方が示され、彼らと活発に意見交換をおこなった。問題を多角的にみるのに大いに役だった。
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Strategy for Future Research Activity |
諸外国ではbody-worn camera (BWC) の普及が一層進み、それにともなって研究も日々進展していることから、その動向の把握にさらに努め、これまでの検討で不足している部分を見定めて研究を進める。 そのほか、GPS捜査や取調べの録音・録画等の「情報化社会」に直接関わる警察活動の手法についても検討を進めるとともに、BWCやGPS捜査では、警察活動の任意処分性・強制処分性の区別やそれに関連する法律による統制といった基礎的な課題も問題になることから、このような基礎的な課題についてもあらためて検討してみたい。
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Research Products
(3 results)