2020 Fiscal Year Research-status Report
途切れのない児童虐待対応策の検討―特に、刑事規制強化の観点から
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16K03374
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
柑本 美和 東海大学, 法学部, 教授 (30365689)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 児童虐待 / 教員によるわいせつ行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、性的虐待、とりわけ、わいせつ行為を行った教師への対応について検討を行った。文部科学省の調査によれば、2019年(令和元年)度にわいせつ行為等(セクハラも含む)により懲戒処分等を受けた公立小中高校などの教員は273人と、2018年度に続き過去2番目の多さを記録していた。その273人のうち、174人は強制性交等、強制わいせつなどの「わいせつ行為」 によって処分が行われており、そのうち、自校の児童生徒等を含め18歳未満の者を対象としていた者は126人にも上っていた 。これはあくまでも懲戒処分等を受けた公立学校の教員に関する調査であるため、私立校などの教員によるものは含まれておらず、実数ははるかに多いことが想像できる。 わが国では、現行法上、児童生徒等へのわいせつ行為により懲戒処分等を受け教員免許が失効等した者であっても、3年が経過すれば申し出を行い再交付を受けることが可能である。しかし、法務省の調査によれば、わいせつ行為を行った者の中には、一定数、再犯する者がおり、保護者からすれば、そのような者が教員として勤務しているかもしれない学校に子どもを通わせることへの抵抗は大きい。そのため、イギリスの制度を参考に、学校や保育施設等など、子どもに関わる職業や活動に応募する段階で、過去の性犯罪歴等が分かり、採用を行わずに済む制度を創設するよう求める声が多方面からあげられている。 イギリスのみならず、ヨーロッパの多くの国で、そのような制度の創設を加盟国に求めるEU指令の存在により、雇用者が申請者の犯罪歴又は資格のはく奪について照会する権利を認める立法を行っている。わが国でも、性犯罪者の更生の利益に目配りしながらも、子どもへの性犯罪防止対策を本格的に講じる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
イギリスにおける新しい被虐待児童保護制度の運用について視察を行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響で渡航が不可能となったことにより、今年度も視察を断念せざるを得なかった
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Strategy for Future Research Activity |
わが国の渡航中止勧告が解除され、現地への渡航が可能となったならば、イギリス視察を実施したいと考えている。しかしながら、もし渡航が不可能な場合には、刑事司法制度における性的虐待の加害者に対する新たな処遇の検討を行いたいと考える。
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Causes of Carryover |
実施予定だったイギリス視察について、新型コロナウイルスの影響で渡航が全く不可能になり、実現できなかったため。
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