2017 Fiscal Year Research-status Report
履行利益、信頼利益、費用賠償の相互連関-日本、アメリカ、ドイツの比較研究
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16K03381
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池田 清治 北海道大学, 法学研究科, 教授 (20212772)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 履行利益 / 信頼利益 / 費用賠償 / 契約締結上の過失 / 契約締結過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
履行利益、信頼利益、費用賠償の相互関係という損害賠償法上の基本的・理論的問題について、比較法的知見に基づき考察を深め、その成果を解釈論的・立法論的提言に結び付けることを目的とする本研究プロジェクトにあっては、平成29年度は、平成28年度の実施状況報告書に記したとおり、その年度の前半、①池田清治・契約締結過程の民事責任論と消契法3条 法学教室441号17-22頁 2017年6月と②池田清治・不法残留外国人労働者の逸失利益・慰謝料 新美育文、山本豊、古笛恵(編)『交通事故判例百選〔第5版〕』(有斐閣、東京)116-117頁 2017年10月という2つの成果を上げた。 また、年度の後半にも、③池田清治・履行不能の規律-プロセス変化の存否 ジュリスト1511号22-27頁2017年10月と④池田清治・日本における契約締結上の過失理論の生成、展開、そして、課題 民法研究第2集第4号23-34頁 2018年3月を公表した。 このうち、①②④と本研究プロジェクトとの関係については、前年度の報告書に記したとおりであるが、②に関連しては、池田清治 信頼の原則 新美育文、加藤新太郎(編)『実務精選100 交通事故判例解説』(第一法規、東京)52-53頁 2018年1月を公表しており、さらに上記①に関連する論稿をすでに2本書き上げ、校了している(今年度の前期には、公表される予定である)。さらに、もう1本、今年度の前半に書き上げることにしている。 さらに、③は、民法改正法において、損害賠償の要件と解除の要件とが区別されたことから(前者は帰責事由を要件とするが、後者では不要とされた)、その異同を確認する意味でも得るところがあった。特に信頼利益の賠償や費用賠償において、どのような意味での帰責事由を要するかは、理論的のみならず、実践的にも興味深い問題といえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況については、上記の「研究実績の概要」に記したとおりである。比較法的動向を含めた現在の議論の全体像については、上記④で示し、個別的な解釈論については、上記①で論じているが、上記①の関連で、すでに論稿を2本書き上げている。「順調」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、最終年度であり、これまでの研究成果をまとめるとともに、さらに研究の深化を図る。具体的には、(1)特に無償契約における不履行の損害賠償のあり方を探ると同時に、(2)締約強制における損害賠償についても、検討してみたい。 まず、(1)については、不履行の効果を履行利益の賠償とすることの適否を検討したい。無償契約において、そのように強い効果を認めてよいかどうか疑わしいからである。これは次なる研究プロジェクトの突破口になるのではないか、との感触を得ている。 また、(2)については、従前、議論がほとんどされていなかったが、NHK受信料訴訟を契機として、民法学に対して問いかけられており、締約強制の実効性の面からも興味深い問題を含んでいる。
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