2016 Fiscal Year Research-status Report
取締役会の企業価値実現のプロセスから見た実効的なコーポレートガバナンスの再構築
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16K03383
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塚 章男 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (50384863)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コーポレートガバナンス / インセンティブ報酬 / clawback条項 / 役員報酬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、取締役会の経営判断を最大限尊重しつつ企業の中長期的利益の最大化を目的としたコーポレートガバナンス・モデルを基本として、取締役会による[目標設定、実行、評価、公表、フィードバック]の適正なプロセスと実効性ある監査の構築を提案するものである。初年度の目標は、長期インセンティブ報酬やclawback制度を導入して、目標達成に即した役員報酬の体系を見直すことにある。 長期インセンティブ報酬を導入する場合、報酬の決定過程、内容、開示をどうするか、特に評価の前提としてどのような指標に連動させるのか、事後に不正等が発覚した場合のclawback制度における取戻し事由、取戻し対象の範囲・期間をどうするのかが重要となるが、本年度は以上の論点を調査、研究した。 その成果として、「役員報酬とガバナンスーclawback条項を手掛かりとしてー」との演題で、国際取引法学会・国際企業法制部会研究会(2016-06)にて報告を行った。また「役員報酬とコーポレート・ガバナンス-clawback条項を手掛かりとして-」(筑波ロー・ジャーナル21号pp.19-36, 2016-11)を公刊した。その間、アメリカ会社法の権威であるStephen Bainbridge (UCLA)教授にインタビューを実施した。同教授からは2015年7月にSECが公表した規則案についてのその後の動向などにつき情報を得るとともに、アメリカ(法規制型)とイギリス(ソフトロー型)における報酬規制を含むコーポレート・ガバナンスの考え方の根本的違いなどにつき有益な意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度分は「研究実績の概要」記載のとおり、研究計画をすべてクリアし、順調に推移している。ただし、これと併行して、第2年度に計画しているイギリスでの調査研究の準備として、現地情報を得るとともに、現地関係機関との連携を開始し第2年度にスムーズな調査研究ができるよう準備をする予定であったが、これについては手がつかなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、主としてイギリスにおいて調査研究を実施する予定である。日本のCGコードは英国財務報告書評議会(FRC)のコーポレートガバナンス・コードを手本にしたものであるが、同コードを説明した「取締役会の実効性に関するガイダンス」は、非業務執行取締役や業務執行取締役の役割分担、取締役会における情報や審議の質など16項目を列挙しており、日本のCGコードの解釈にも役立つものである。FRCに対し現状分析と現在・未来のガバナンス構想につきヒアリングを行い、種々の情報を得たい。また、研究者として、会社法のこの分野の権威であるOxfordやCambridgeの教授にヒアリングを行い、全般的な理解を深めたい。さらに、可能であれば、情報開示および取締役会評価の実務に携わっている大手会計事務所を訪問し実務情報を得たい。調査研究結果を論文や調査報告として順次公表する予定である。
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Causes of Carryover |
アメリカ国内でヒアリングの予定であった対象者が、都合で不可能になったため、若干経費が余剰となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
イギリスでの国内調査費用に振り向けたい。
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Research Products
(2 results)