2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03386
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
堀田 佳文 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (40375605)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 会計監査人 / 民事責任 / 不正会計の抑止 / 内部統制 / ゲートキーパー責任 / 任務懈怠 / ソフトロー / 経営判断原則 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果は、①前年度に引き続き監査実務や企業不正に携わる実務家への実態調査を進めた点、②本研究を理論面でいわゆるゲートキーパー責任論との関連において展開させることができた点、③ドイツ法の分析に本格的に取り組んだ点にある。 ①は、複数の実例に即して実務対応とその問題点を知る機会に恵まれた。しかし聴取元との関係や聴取内容が機微に触れることから活字媒体での公表が難しいという問題に直面している。会計不正の原因や態様は事例ごとに様々であり、定性的な分析を要するが、関係者が特定されやすいという難点がある。今年度の公刊業績は著名な粉飾決算事例を素材とした分析だが、上記調査から得た知見も一般化した上で織り込むことができた。 ②は、会計監査人の監査が機能していない場合に、ゲートキーパーとしての会計監査人の責任がどうあるべきかという問題であり、この点についての考察を試みた。監査機能の不全は内部統制が効いていないことを意味するが、標準的な監査理論の考え方に従うと、会計監査人に責任を追及しうる局面は極めて限定される。しかし民事責任の観点からは、会計監査人がその任務を果たしていないとみられるケースが少なくない。会計監査人の任務と任務懈怠については最終年度に更に考察を深めたいが、ここまでの検討で、監査理論上と民事法上の「責任」概念にかなりの齟齬があることが明らかになっており、この点を整合的に理解するために、セーフハーバーとして経営判断原則の考え方を援用することができないかも併せて検討を進める。 ③についてはベルリン・フンボルト大学のリソースを活用できた。同大学にはドイツ役員責任論の第一人者が在籍しており、そのご厚意で同大学所蔵資料へのアクセスを得たほか、同大学の研究チームと連携を図りつつ研究を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲートキーパー責任論との関係で進展があった点は当初計画を越える成果である。一方、①実際の事案は非常にデリケートであり、守秘義務との関係で原稿化に細心の注意を要する、②ドイツ法上の議論は当初の予想以上に論点が多く分析に時間がかかっている、という問題も生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に係る主要資料の収集と研究展開は、所属研究機関(千葉大学)をベースに、東京大学およびベルリン・フンボルト大学を利用して進めており、これが大きくプラスに作用している。現在進めているドイツ法との比較研究は、フンボルト大学に主要文献・有力研究者が所在していることから、最終年度の2018年度も引き続きそのリソースを活用して本研究のまとめに尽力する。
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Causes of Carryover |
海外調査出張の旅費を抑制できたことに加え、資料収集にあたってフンボルト大学内のオンラインデータベースを活用できたため。 次年度使用額はドイツのコンメンタール購入、および本研究の成果公表促進に充てる。
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Research Products
(1 results)