2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03391
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早川 眞一郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40114615)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生殖補助医療 / 代理母 / 法的親子関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、生殖補助医療に関する規律の全般について、日本及び諸外国の状況及び問題点を確認し整理するとともに、本研究の主たる素材のひとつである、生殖補助医療(とくに国際的代理懐胎)から生まれた子の親子関係に関する日本及び諸外国の規律の現状を確認する作業を行った。 日本での状況については、研究代表者自身の研究業績も含めてこれまでの主要な文献をあらためて精査するとともに、現時点での研究成果の到達点と今後の課題を整理した。諸外国での状況については、日本語のみならず、英語・フランス語等による研究業績も含めて主要な文献を渉猟し、同じく、現時点での研究成果の到達点と今後の課題を整理した。 なお、香港大学とケンブリッジ大学の共催による、香港でのシンポジウム(平成28年9月)に報告者・パネリストとして招かれたため、生殖補助医療をめぐる法的規律について日本法の現状について報告するとともに、諸外国(タイ、台湾、韓国、オーストラリア、英国等)からのパネリストとの討論・意見交換を通じて、この問題に関する世界の現状に関して貴重な情報を得ることができ、また研究者・エキスパートとの人脈も形成することができ、今後の研究遂行のためにも有益な機会となった。 また、日本国内でも生殖補助医療に関する各種の研究会に参加して、社会学者・医療関係者などさまざまな立場の人からの意見を聴取することができたほか、国際私法フォーラム(平成28年12月)において報告する機会を得て、主として法律家からさまざまなコメントを受けることができたのも貴重な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた、生殖補助医療に関する規律の全般について、日本及び諸外国の状況及び問題点を確認し整理するとともに、本研究の主たる素材のひとつである、生殖補助医療(とくに国際的代理懐胎)から生まれた子の親子関係に関する日本及び諸外国の規律の現状を確認するという作業は、順調に進捗したものと考える。とりわけ、香港でのシンポジウムに報告者・パネリストとして参加して諸外国からの研究者と直接意見交換ができたのは貴重な成果であった。(もっとも、この分野は、実務の展開が急速であるため、最新の法的状況をフォローするのが難しいのも事実であり、諸外国の最新の情報までを完全に把握しているかは常に注意しなければならない状況にある。)
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、初年度の成果を踏まえて、全般的な検討を継続するとともに、日々進展する可能性のあるこの問題に関する諸外国の状況をフォローして、さらに情報の収集と分析を行うこととする。 とくに、欧州人権裁判所とその下でのヨーロッパ諸国の動向を正確に把握するためには、膨大な資料を収集し整理する必要があるため、初年度での整理をもとに、さらに踏み込んで資料の読み込みと検討を行う。とりわけ、フランスの動向は、この問題についての極めて重要なサンプルを提供しており、代理懐胎を禁じる法律の制定過程、国際的代理懐胎による出生子の法的親子関係をめぐるいくつかの判例、また欧州人権裁判所によって欧州人権条約違反とされた以降の判例等について、これまでの邦語文献および仏文・英文の文献を網羅的に収集して読み込む予定である。 また、インド・タイ等のアジア諸国も含めて、代理懐胎を実施している国における代理懐胎実施の実態、法的な規律およびその運用等について、最新の情報を得るように努める。その際には、上記の香港での国際シンポジウムで面識を得た各国の研究者・実務家との意見交換によって、より充実した情報収集が可能になるものと期待される。 また、ハーグ国際私法会議の国際的代理懐胎に関するプロジェクトが本格的に始動したので、このプロジェクトの動向にも十分な注意を払い、同会議の常設事務局などとのコンタクトを通じて、このプロジェクトの進展状況や将来の方向等について正確な情報を得ることにしたい。
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Causes of Carryover |
若干の次年度使用額が生じたのは、年度末に予定していた海外出張(調査研究)が、受け入れ機関の都合等により中止になったこと、および、購入予定の外国文献の輸入が遅れたことなどによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越しされた若干の次年度使用額も含めて、研究遂行に必要な文献の購入、調査研究のための旅費のために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)