2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03393
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 亘 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00282533)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 企業統治 / 取締役会 / コーポレート・ガバナンス / 独立社外取締役 / 会社法 / コーポレートガバナンス・コード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平成26年会社法改正および平成27年のコーポレートガバナンス・(CG)コードによる取締役会改革が企業統治および企業業績にどのような影響を及ぼしたかを実証的に検証するものである。 研究初年度である平成28年度は、平成26年改正会社法およびCGコードの諸規定について検討を行うとともに、CGコードが企業統治ないし企業業績にもたらした影響に関する国内外の実証研究論文を調査・研究した。また、CGコードが採用するコンプライ・オア・エクスプレイン・ルールが、どのような経路によって、企業に対して望ましい企業統治の採用を促すのかについて考察した。この点に関する従来の説明は、株価の下落圧力を通じて、経営者が望ましい企業統治を採用するインセンティブを与える、というものであった。しかし、この説明に対しては、経営者が株価を気にしているのであれば、コンプライ・オア・エクスプレイ・ルールを待たずに、よりよい企業統治を採用するはずではないか、またもし、経営者は株価よりも自己の利益を優先するのだとすれば、コンプライ・オア・エクスプレイン・ルールによってよりより企業統治の採用を促しても効果がないのではないか、という疑問が生じる。そこで本研究では、こうした従来の説明に代えて(またはそれに加えて)、企業統治はネットワーク外部性(多くの企業が同種の構造を採用するほどその価値が高まるという性質)を有していることを前提として、CGコードが企業行動をコーディネートして、集団的により望ましい企業統治構造の採用を促すことができる、という仮説を構築した。以上の研究は、東洋経済新報社から出版された企業統治に関する共著の一章という形で、公表した(公表業績参照)。 また、次年度以降の実証研究の準備として、パネルデータを用いた傾向スコア・マッチング分析を初め、本研究に必要と考えられる実証分析手法の習熟に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載のとおり、コンプライ・オア・エクスプレイン・ルールがどのような経路で企業に望ましい企業統治構造の採用を促すかについて、検証に値する仮説を構築するなど、実証研究の遂行に向けた準備を順調に進めているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に、国内外の実証研究の調査および理論仮説の構築を行ったため、平成29年度以後は、これを生かして、(1)コーポレートガバナンス・コードを受けてどのような企業が取締役会改革(特に、独立社外取締役の選任・増員)を進めたか、および、(2) そのように改革を進めた企業はパフォーマンスを改善させているかについての実証研究を進めたい。平成29年度は、まだ (2) の分析を進めるには時期が浅い(改革の成果がまだ目に見える業績に現れにくい)と考えられることから、(1) の分析を中心に進めるが、(2) についても、パイロット的に研究を進める。
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Causes of Carryover |
購入予定の図書が次年度刊行となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入予定の図書を次年度に購入する。
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Research Products
(1 results)