2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03395
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小粥 太郎 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (40247200)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 民事執行法 / 民法 / 実体法と手続法 / 名誉毀損 / 謝罪広告 / 田中耕太郎 / 立法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、前年度に開始された、山本和彦一橋大学教授を座長とする民事執行手続に関する研究会にひきつづき参加した。この科研費のプロジェクトにおいて検討すべき課題と密接にかかわる問題を検討する研究会だったので、この研究会に参加し、その成果としての報告書づくりにかかわることは、たいへんに意義があることだったと考える(研究会報告書は、平成28年6月に、民事執行手続に関する研究会報告書として、金融財政事情研究会から公表された)。この報告書は、民事執行手続に関する研究会に参加した人々(裁判官、弁護士、法務省・警察庁職員のほか、民事手続法、民事実体法の研究者等。私を含め)の共同研究の成果であると考えるから、ここでその内容を簡単に紹介する。民事執行手続上のさまざまな問題について検討し、現実的な立法的対応の可能性について、基礎的な検討が行われている。研究会で扱われた主要なテーマは、債務者財産の開示制度の実効性の向上、不動産の競売における暴力団員の買受け防止の方策、子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化等であるが、本研究計画との関係で重要な問題は、子の引渡しの執行方法についての検討部分と、財産開示制度の改善に向けた問題についての検討部分である。 また、執行という問題に関しては、民事の名誉毀損事件の判決による謝罪広告命令の執行について、やや掘り下げた検討を行った。その成果は、拙稿「田中耕太郎からみる近代」駒村圭吾編『テクストとしての判決』(平成28年12月刊)として公表された。謝罪広告を命ずる判決の憲法適合性が争われた最高裁判所の昭和31年7月4日判決、これに付された田中耕太郎の個別意見、さらに田中耕太郎の著作を素材とした研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に行うべき課題として当初予定していた事項は、山本教授の研究会に参加して、研究会報告書のとりまとめにすこしでも役立てるように努力するということ、それから、謝罪広告命令の執行について検討する論文を公表することの2つであった。 これら2つについて、いずれも、当初予定のとおりの成果が公表されたので、おおむねというよりは、もしかすると、自分としてはとてもよく進展したというべきくらいである。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、共有の勉強に時間をとられており、その過程で、共有の法的性質(共有者は1個の所有権を複数人で有しているのか、共有者は所有権の性質を有する持分権をそれぞれ有しているのか、という、いわゆる単一説か複数説かの争い)と、共有関係訴訟の問題の関連性について、実体法と手続法との関係という観点から、興味深い問題があるという感触を抱いている。 できれば、民事執行手続に直接関係する論文を書きたいとは思うが、本年度は、まずは、共有関係の原稿をまとめる(公表は次年度以降になるだろう)ことを目標にしたい。 その上で、民事執行手続と民法との関係について、法制審議会の関係部会の議論をフォローするという勉強をつづけ、論文を執筆する準備をすすめたい。
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Causes of Carryover |
契約差額が生じたことにより少額の残額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額なため平成29年度の書籍購入に充てる。
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