2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03398
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉政 知広 京都大学, 法学研究科, 教授 (70378511)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 民法 / 民事法 / 私化 / ウィーン売買条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、国家以外の様々なアクターによって規範が設定され、その規範が一定の法的な効力を有するという現象を、法の「私化」という概念をもって把握し、民事法理論がこうした現象にどのように応接・対応するべきかを検討するものである。 本研究課題では、法の「私化」という現象を把握する理論的枠組みを検討する理論的・総論的な分析を進めると同時に、契約法を中心とする民事法の領域における具体的な問題に即して私的な規範の位置づけを検討するという各論的な分析も並行して進めている。 本年度は、各論的な検討として、国家以外のアクターによる規範の形成・設定が顕著な国際的取引について研究を進めた。具体的には、国際売買契約に関する国際ルールとして大きな影響力をもつに至っているウィーン売買条約(CISG)に関する研究を行ない、その成果の一部を公表した。ウィーン売買条約に関する研究は次年度も継続する予定である。さらに、2017年に実現した民法(債権法)の改正についても、本研究課題の問題関心から研究報告などを行なった。 理論的・総論的な分析の成果と位置づけられるものとして、本年度は、いわゆる「日本的取引慣行」を法的な視角から検討するシンポジウムにコメンテーターとして関与する機会を得た。「日本的取引慣行」は、取引社会における私人による規範の設定とも評価することができるものであり、本研究課題からも非常に興味深い素材だといえる。さらに、本研究課題の視角と従来の法律学における議論との接合を図るという目的から信義誠実の原則(民法1条2項)に関する総合的な研究をまとめた。注釈書の一部として公表される予定だが、諸般の事情により本年度の公刊は実現しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、法の「私化」という現象に関する理論的・総論的な分析と、私的な規範の位置づけを検討する各論的な分析の双方に関して一定の研究を進め、その成果の一部を公表することができた。 「研究実績の概要」に記したとおり、各論的な分析としては、私的なアクターによる規範の形成・設定が最も重要な意味をもっている国際的取引に関して、ウィーン売買条約(CISG)を素材とした研究を進めた。日本の民事法学においては、国際的な規範形成、法統一は、もっぱら観察・摂取の対象として位置づけるのが一般的であった。これに対して、本研究課題の成果である論文では、国際条約や私的なアクターによって形成される規範からも逸脱していこうとする国際的な取引実務に対して、各国がどのように関与していくべきなのかという問題関心から検討を行ない、私法の各領域において急速に進展している法統一にどのように対応していくべきなのか、一定の指針を提示することを試みた。 理論的・総論的な分析としては、日本の取引社会における私的な規範設定とも位置づけられる「日本的取引慣行」に関する研究プロジェクトに関与する貴重な機会を得た。より法学に内在的な研究成果としては、一般条項(論)に関する研究を進め、その成果を取りまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、理論的・総論的な分析と各論的な分析の双方を進めることを予定している。 各論的な分析の素材としては、本年度、一定の成果をみた国際的な取引について引き続き取り上げることを予定している。具体的には、契約法を中心とした法統一へ向けたイニシアティブについてさらに研究を進めることを検討している。その他にも、他分野の研究者、他大学の研究者との共同研究を複数予定しており、そこでの情報交換、意見交換を通じて、これまでに民事法学において十分な検討が行なわれていない個別的な課題について、本研究課題の視角から検討を進め、研究を推進したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究課題の初年度にパソコンの購入の延期をした影響が残っているほか、本年度も海外調査は実施しなかった。次年度、本研究課題の遂行に必要な物品費に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)