2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03399
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡部 美由紀 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (40271853)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 既判力 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、とくに、裁判所等の判断の拘束力について、国内でどのように理解されてきたかについて焦点を当てて研究を行った。具体的には、①確定判決の既判力についての伝統的な理解を確認した上で、②家事審判の既判力、および③仲裁判断の既判力について、各制度目的に照らして、確定判決の既判力と比較しながら、検討を加えた。 ①については、訴訟物との関係に着目しながら、国内法における確定判決の既判力論の展開を確認した。その際、議論の展開過程で問題となったドイツ法、アメリカ法を参照した。 ②については、家事紛争および家事事件の特殊性に鑑みて、家事審判の目的に見合った家事審判の効力を検討した。既判力の有無を考える上でとくに問題となるのは、家事審判の対象が、争訟性のあるものから争訟性のないものまで多様であり、国家の後見的役割が多分に期待されているものもあること、民事訴訟と違い、権利法律関係の終局的確定を目的とするものではないこと、民事訴訟と手続構造も異なっており、二当事者対立構造を採るとは限らず、同様の手続保障がされていないということである。従来の議論を踏まえ、争訟性の低い家事事件手続法別表第1事件と争訟性の高い別表第2事件に分け、結論として、とりわけ後者について、「既判力」という名称であっても、確定判決の既判力とは異なる「既判力」を想定することが可能であり、家事紛争の解決のために設定される家事審判には、より弾力的な既判力を付与することが可能であることを述べた。 ③について、申請者は、2011年に、国際仲裁判断には、国家法の規律から離れて国際仲裁という事案の性質に見合った「既判力(res judicata)」を想定すべきだとする2009年のILA(国際法協会)による提案を支持する旨の学会報告をしたが、近時諸外国でもこの提案に沿った論稿が散見される。そこでこれらを紹介しつつ、近時の議論を分析検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
確定判決の既判力をはじめとして、国内における裁判等の既判力論の展開をおよそ確認することができた。その際、家事審判や仲裁等、一定の制度目的の下、対象とする紛争類型や手続構造が異なる手続における手続主宰者の判断の効力をめぐる議論をあわせてみることで、それぞれの制度に期待されている紛争解決機能、手続構造と判断の拘束力の関係をどう理解すべきかについて示唆を受けることができた。他方で、外国法の展開については、従来の議論の確認が中心となり、情報収集は行ったものの、まだ近時の議論を十分にフォローすることができていない。これについては、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、とりわけ、判決の既判力(res judicata)をめぐる議論の展開を中心として、ドイツ法、EU民訴法、アメリカ法など、外国法における裁判等の判断の拘束力論を調査し、これを分析・検討する。そこでは、民事訴訟制度に紛争解決制度として期待されている紛争解決の幅および審判対象と、判断の拘束力の範囲との関係に着目したい。そして、各国の訴訟法制度を比較検討し、議論の方向の共通点と相違点について明らかにすることで、日本法における判断の拘束力論の今後の方向性について示唆を受けたい。
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Research Products
(3 results)