2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03399
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡部 美由紀 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (40271853)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 既判力 / 判断の拘束力 / 手続目的 / 仲裁判断の既判力 / 家事審判の既判力 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に引き続き、日本法、ドイツ法、アメリカ法を中心に既判力ないし判決効と審判対象の関係についての検討を行うとともに、仲裁判断における既判力及び家事審判の拘束力についての研究成果を公表した(渡部美由紀「国際仲裁における仲裁判断のres judicata」後掲『上野泰男先生古稀祝賀論文集・現代民事手続の法理』771頁以下、「審判の効力」後掲『実務家事事件手続法(上)』521頁以下)。 民事紛争の解決の実効性を確保するためには、当事者が選択した紛争解決手続の結果について、蒸し返しを防ぐための一定の拘束力を付与することが不可欠である。民事訴訟手続の場合、この役割を担うのは既判力であり、その範囲は当事者が設定した訴訟物(訴訟上の請求)の範囲と一致するのが原則である(民事訴訟法114条1項)。この規律は母法であるドイツ法よりも狭く、国際的にみてもかなり限定されている。しかしながら、わが国の判例・学説は、信義則等を用いて手続過程を評価し、後訴での主張を遮断する範囲を実質的に拡張してきたため、実際に後訴の主張が遮断される範囲は、他国と比較してもそう狭いものではなく、民事訴訟が担う紛争解決の幅には共通性があるといえる。これらを踏まえて、今後の判決の遮断効論のあり方を考える必要がある。 また、いわば私的な裁判官による紛争解決制度である仲裁手続の結果として出される仲裁判断にも既判力が認められるが(仲裁法45条)、これは、従来、国内民事訴訟法の既判力論を演繹する形で検討されてきた。しかし、仲裁制度の特殊性を踏まえ、当事者の意思を反映させた仲裁判断に見合った既判力論を構築すべきである。さらに、家事手続の結果出される家事審判の拘束力についても、前提となる手続や目的の違いから、確定判決の既判力とは異なる、家事手続に見合った拘束力のあり方を模索すべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内法の検討はおおむね予定通りすすんでいるが、判決効論の展開についての比較法的な検討が当初の予定よりやや遅れている。 その理由としては、海外文献等の資料の収集に手間取ったこと、また、十分な研究成果としてまとめるためには、想定したよりも多くの文献にあたる必要があることが判明したこと等があげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、手続目的並びに判決効及び審判対象の関係に注目し、これまで収集した資料を基礎として、とりわけドイツ法、EU民訴法及びアメリカ法等の規律を分析して、比較法的な検討をおこなう。その際、海外の研究者から適宜アドバイスを受け、最新の情報の収集に努める。そのうえで、これまでの研究成果を踏まえ、日本法における判断の拘束力論の今後の方向性について私見を固め、論文を執筆・公表する。
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Causes of Carryover |
物品費として一定の書籍等の購入を予定していたが、他の研究者が購入し図書館に入れるなどしたために、予算をすべて使わなくても本年度の研究資料を賄うことができた。繰り越し分は、次年度に刊行される書籍及び次年度の検討の過程で新たに必要になった書籍等の購入に充てる予定である。
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