2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03403
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
飯田 秀総 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (80436500)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公開買付け / 金融商品取引法 / 会社法 / 企業買収 / M&A |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は部分買付の現状と公開買付規制のあり方を検討する。英米と比較した日本の公開買付の特徴として,買付株式数に上限を付けて行う部分買付の実行が認められており,買収後も対象会社の上場を維持する目的などで実際に活用されている。部分買付を容認することには,全株式を買収する資金を調達できない者にも支配取得のチャンスを与えるので,支配権市場を活発化させるメリットがある一方で,英米での経験によれば,非効率的な買収に濫用されるおそれがある。日本法は,今後も部分買付けを容認すべきか,また,容認するとしても規制を改善すべき点はないか,という問題を明らかにするのが本研究の目的である。 平成28年度は,第1段階目の作業として,部分買付けについての規制と実務の発展について,アメリカ・イギリス・日本の3カ国について比較法研究を行った。アメリカについては,1934年証券取引所法における公開買付規制の歴史的な位置付け,敵対的買収の手段としての活用の積み重なり,そしてそれに対抗する防衛策の開発とそれに関する裁判例の発展というダイナミックな動きの中で,部分買付の位置付けを研究した。また,最近の動きとして,ヘッジファンドなどのアクティビストが少数の株式を買い付けて経営陣にガバナンス改革など様々な要求をすることについても判例や先行研究を調査した。 イギリスについては,テークオーバー・パネルによるシティコード制定前の部分買付けによる企業買収事例の検討を行うとともに,シティコードにおける部分買付の規制の趣旨を明らかにすべく,資料収集と読み込みを行った。 日本については,公開買付け以外の買収手法の多様性(市場での買い集め,新株発行等)を視野に入れつつ,部分買付の利用のニーズがなぜ高いのかという問題の検討に着手した。また,計画を一部先行させて,日本の部分買付のデータセットの作成に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定どおり英米の比較法研究や,日本法の特徴についての資料収集や検討に着手できている。また,部分的には,計画を前倒しして,データセットの構築にも着手できている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,比較法研究を継続する。 また,平成29年度は,第2段階目の作業として、部分買付けによる企業買収のもつ企業価値・効率性への影響についての理論モデルの構築である。これは第1段階で得られた比較法的研究の成果を生かしつつ、法と経済学の手法で研究をする。先行研究をレビューする作業を行うとともに、よりフォーマルなモデルの構築も目指す。
平成30年度以降は,第3段階目の作業として、第2段階で構築した理論モデルを、日本の実例を使って実証的に検証する。第4段階目の作業として、以上で得られた知見を、日本法の状況と日本の会社実務の状況をふまえて日本に適した形で達成できるような仕組みは何か、ということに十分に注意を払いながら、部分買付けに関する立法論のグランドデザインを提示する。
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