2017 Fiscal Year Research-status Report
電子的決済手段(電子マネー・仮想通貨)の法的性質―法改正・立法化に向けた提言
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16K03414
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
深川 裕佳 東洋大学, 法学部, 教授 (10424780)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 口座振込み / 決済 / 債権譲渡 / 三者間相殺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,電子マネー・仮想通貨についての利用実態を調査し,立法化の進むEU法を比較対象として,「電子マネー・仮想通貨」に関する法改正・立法へ向けた提案を行おうとするものである。 前年度(平成29年度)は,この研究目的を遂行するために,電子マネー・仮想通貨に関するフランスおよびイギリスにおける資料を収集し分析を行った。 その過程において,電子マネーによる支払取引の基盤として,口座振込みの仕組みをさらに解明する必要があることが明らかとなったため,(1)フランスにおける預貯金口座に対する振込み (virement) をめぐる最新の立法状況を確認し,また,(2)日本において特に金融機関(または支払決済機関)間において簡易な資金の移動を実現するために問題となる三者以上の相殺に対して影響を及ぼし得る民法(債権関係)改正による新469条2項2号の規定を検討した。これら(1)及び(2)はいずれも論文として公表した。(1)においては,口座振込みによる弁済の効果発生時期に関して,債権者の満足が得られると考えられる被仕向銀行による振込金額の受領を停止条件として,仕向銀行による振込指図の受領時に遡及して弁済の効果が生じるというフランスの学説を紹介し,仕向銀行と被仕向銀行間の決済や受取人への入金記帳を通常は知らされることのない依頼人にとって,資金を提供して振込指図をすれば免責されると考えるべきものと考えた。また,(2)については,日本民法新469条2項2号は,将来債権譲渡によって譲渡人と債務者の二人の間に債権の対立という状態が生じることがないとしても,債務者による相殺を可能にする三者間法定相殺を定めるものであることを明らかにした。 これらによって,特に電子マネーの仕組みを解明するための基本的な仕組みを民法の概念を用いて説明するための手段を検討することができたものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電子マネーの基本的な仕組みについての解明については,比較法的な検討も含めて,ほぼ計画通りに遂行し,論文として公表することができているものの,仮想通貨やブロックチェーン等の新しい技術に関する法律文献の刊行が遅れているために,その入手が困難となっていて,この検討が予定よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,本研究課題の最終年度であり,前述のように仮想通貨に関する検討が計画よりもやや遅れているために,これを重点的に検討した上で,EU電子マネー指令およびEU決済指令の最新の動向を踏まえながら,フランスにおける刊行物を収集して電子マネー・仮想通貨に関する法的な議論を分析して,そこから示唆を得て,日本における法改正・立法的提言も含んだ理論構成を検討し,論文として公表することを計画している。
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Causes of Carryover |
平成29年度中に刊行される予定であったフランスの文献を発注していたところ,出版予定が4月に延期されることが定まったために,次年度使用額が生じた。これらはすでに発注済みのため,本年度(平成30年度)中に次年度使用額全額を使用する予定である。
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