2017 Fiscal Year Research-status Report
状況・関係性の濫用と契約の有効性ー判断能力不十分者を包摂する契約法理の探求
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16K03416
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
菅 富美枝 法政大学, 経済学部, 教授 (50386380)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脆弱な消費者 / 消費者被害の抑止 / 消費者被害の救済 / 情報提供義務 / 国連障害者権利条約 / 自己決定支援 / 合理的配慮義務 / 法的能力の平等 |
Outline of Annual Research Achievements |
本助成研究二年目にあたる2017年度は、概括的に言えば、インプットからアウトプットまで、そして、国内活動と国際活動の両方について、さらには学界活動とともに社会貢献活動についても、極めてバランスよく研究が遂行できた一年間であったといえる。以下、詳細を述べる。 第一に、EU加盟国における消費者法の最新の動きを知るべく、ヨーロッパ契約法学会(SECOLA)年次学会(於ミラノ・バッコーニ大学)に参加し、各国出身の研究者と意見交流の機会を得た。 第二に、日本比較法学会において、イギリスにおける消費者被害抑止と救済の執行メカニズムについて報告を行い、制限行為能力制度を用いることなく、脆弱な消費者を悪質な事業者から保護する方策を紹介した。 さらに、そこでの報告に関連して、第三として、①近畿弁護士会連合会において招聘講演を行い、さらに、②内閣府消費者委員会において、地方における消費者行政に関して報告を行う機会を得た。 第四に、著作論文をまとめ、『新消費者法研究ー脆弱な消費者を包摂する法制度と執行体制』を刊行した。本書の刊行をもって、本研究のテーマの一つである、成年後見制度と消費者法を架橋する試みが達成できたといえよう。 第五に、オランダ・マースリヒト大学からワディントン教授を招聘し、国際セミナー「脆弱な消費者と市場参加ーー合理的配慮の実現をめざして(EU法からの示唆)」を法政大学市ヶ谷キャンパスにて開催した。当日は、法学研究者、社会福祉学研究者、経済学研究者、法律実務家、社会福祉実務家、障害福祉実務家が集まり、日本とオランダ、他のEU加盟国における、障害を抱える人々に対する市場のありかた、業界団体(例 製薬会社、金融機関)ごとの方針、事業者側(例 薬局管理者)の理解度や協力姿勢について、活発な議論を交わすことができた。本セミナーによって、消費者法と障害者法を架橋する試みが達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本助成研究の中間期において、すでに、①国内学会における報告、②単著の出版、③国際セミナーの開催を終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本助成研究の最初の二年間を通して、脆弱な消費者を包摂する法制度と執行体制について、日本法、EU法、イギリス法を比較しながら、一定のヴィジョンを複眼的に(すなわち、民事法的、刑事法的、行政法的視点に加えて、法社会学的な観点から)提示することができた。 そこで、今後はさらに各論部分を深めるべく、イギリス契約法及びイギリス消費者法をめぐる裁判所の動きに焦点をあて、特に、BREXIT後に起こるであろう社会変化に伴う法的環境の変遷を追っていきたいと考えている。 ただし、英国と欧州連合(EU)との離脱交渉が難航している現時点では、将来的な方向性の予測が難しいことも確かである。そこで、今後の国際情勢を見守りながら研究を進める一方、万一離脱交渉が長引き、2019年3月末に予定の離脱が延期されるようであれば、BREXIT後の最新状況を本研究の結論に取り込むべく、最終年度を一年延長することも検討している。 引き続き、現地調査や国際学会参加を通してインプットに努め、国内外の研究者との共同連携を図るとともに、本助成研究の成果発表として、引き続き、論文執筆、学会発表、講演を遂行していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2017年度は、2018年3月31日に国際セミナーを開催したため、講演者の渡航費用、滞在費、講演報酬など、開催にかかった経費が2018年度分から支出されることになっている。
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