2019 Fiscal Year Annual Research Report
The validity of contracts under the explititation of situational or relational vulnerability--Seeking for the contract principle which can bring social inclusion to vulnerable people
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16K03416
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
菅 富美枝 法政大学, 経済学部, 教授 (50386380)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 状況・関係性の濫用 / 脆弱な消費者 / 市場への包摂 / undue influence / 判断能力の不十分な者 / 金融包摂 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の2019年度は、本課題研究の主題である、判断能力の不十分な者が契約締結に臨む場合に蒙りうる「状況・関係性の濫用」、及び、彼らを市場に「包摂する」ための契約法理の探求について、さらに考察を深めると共に、4年間の研究成果の対外的発表に努めた。 第一に、日本経済団体連合会21世紀政策研究所における研究プロジェクト「高齢者の自立と日本経済」に参加し、「高齢者と包摂社会」と題する発表を行った。第二に、招聘を頂いた関西大学法学研究所におけける研究プロジェクト「消費者私法における学理上および実務上の諸問題の検討」研究会において、「脆弱な消費者を包摂する法のあり方」と題する発表を行った。第三に、G20「高齢化と金融包摂」ハイレベルシンポジウムに招待を受け、事前質問票にて、消費者に対する事業者の説明義務の強化(単なる努力義務を超えて)、契約書や契約条項の透明化・明白化、サービスの公正化に向けた市場改革、及び、脆弱な立場にある高齢者が正しく意思決定できるよう、支援を提供できる環境を社会や法制度の中に用意することの必要性について、各国の認識に対する問いかけを行った。 調査活動としては、ヨーロッパ法研究所(ELI)年次総会(於 ウィーン)に参加し、様々なセッションを通して知見を広めるとともに、参加者同士の意見交換を行った。また、イタリア・ヴァレーゼ大学法学部を訪問し、現地の教員たちと意見交換を行った。 さらに、昨年度に出版した『新消費者法研究ーー脆弱な消費者を包摂する法制度と執行体制』が第4回津谷裕貴消費者法学術実践賞(学術)を授かり、受賞スピーチにおいて、特に、あらゆる巧妙な「つけ込み行為」を市場から排除するためには、イギリス契約法理の一つである「過大な影響力の行使(不当威圧): undue influence」取消法理が、わが国の法制度を考える上で、大きな示唆を与えうる点を強調した。
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