2016 Fiscal Year Research-status Report
契約法のグローバル化と日仏東南アジアにおける債権法改正の比較法的検討
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16K03417
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
野澤 正充 立教大学, 法務研究科, 教授 (80237841)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 債権法改正 / 民法改正 / グローバル・スタンダード / 契約責任 / 契約不適合責任 / 瑕疵担保責任 / 債務不履行責任 / ウィーン売買条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年における契約法のグローバル化を背景に、各国の民法(債権関係)の改正状況を踏まえ、その内容を詳細に比較検討することにより、日本民法(債権関係)の改正の意義とその比較法的位置づけを明らかにすることを目的としている。この目的を達成するため、研究の初年度である平成28年度は、フランスおよびアジア諸国の研究者との意見交換・調査を行った。具体的には、8月にラオス(ヴィエンチャン)で日本民法の改正とそのグローバル化についての講演を行い、ラオス司法省の民法典起草メンバーと意見交換をするとともに、11月には、ウィーン売買条約の権威であるクロード・ヴィッツ教授へのインタビュー調査を行った(ストラスブール-フランス)。また、同じ機会に、ナンシー第2大学のオリヴィエ・カシャール教授およびパリ第2大学名誉教授のクリスティアン・ラルメ教授にも、フランス債務法改正についてのインタビュー調査を行った。そして、11月下旬には、台湾で行われた日本台湾法律家協会主催の民法改正シンポジウムに参加し、契約法のグローバル化についての講演を行うとともに、台湾の実務家(裁判官・弁護士)および大学の研究者との意見交換を行った。さらに、平成29年3月には、リヨン(フランス)で行われた債権法改正のシンポジウムに参加し、フランスの債務法改正およびドイツの債務法改正(2001年)の成果についての意見を聴取するとともに、日本の債権法改正についての報告を行った。この報告は、「何人も不能に拘束されない」という法原則と、「所有者が物の危険を負担する」というローマ法以来の法原則が、日本の債権法改正によって放棄され、ウィーン売買条約をはじめとするグローバル・スタンダードに従った新しい規律が採用されたことによる法的効果を明らかにするものであり、古くからの法原則に固執するフランスの参加者の関心を引いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、フランス債務法改正の全体像を明らかにするには至らなかったものの、ウィーン売買条約については、当初平成29年度に予定していたクロード・ヴィッツ教授へのインタビュー調査を前倒しで行い、日本の債権法改正において重要な論点の1つである契約不適合責任の解釈に関する重要な示唆を得ることができた。また、東南アジアの調査は、ラオスの法整備支援および台湾での講演のため、必ずしも予定通りに進まなかったが、その代わりに、日本の債権法改正について、ラオスおよび台湾で講演をする機会を得て、十分な意見交換および調査を行うことができた。さらに、平成28年11月のフランス調査では、フランス債務法改正についてのインタビュー調査を行うこともでき、十分な成果が得られている。その成果は、平成29年3月におけるリヨン(フランス)での講演原稿にも反映され、日本とフランスの債権法改正の根本的な考え方の違いを明らかにすることに大いに役立っている。その意味では、全体として、研究は、「当初の計画以上」とまではゆかないものの、「おおむね順調に進展している」と評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、当初の研究計画の予定通り、ラオス民法草案が国会で審議されるため、それに合わせてラオスの調査を行うことを予定している。また、これも当初の研究計画の通り、フランス債務法改正についてのフランスの調査も継続したいと考えている。とりわけ、フランスでは、債務法改正の一部をなす、民事責任法の改正法案が平成29年3月に公にされたばかりであり、この民事責任法についても併せて調査・研究を行う予定である。具体的には、すでに民事責任法改正の立案者の1人である、リヨン第3大学のオリヴィエ・グート教授を立教大学に招聘し、平成29年4月4日に民事責任法案の概要についての講演を行っていただいているため、その原稿を基に、研究を進める予定である。、また、9月にはパリでの代表者による民法改正についての講演も予定されているため、フランスの研究者との意見交換・インタビュー調査も行う予定である。そして、これらの情報を基に、フランス・日本・そして東南アジア諸国に共通する、契約責任法におけるグローバル・スタンダードを明らかにする予定である。
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Research Products
(6 results)