2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03419
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
棚村 政行 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (40171821)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 面会交流支援 / 面会交流 / 養育費 / 子の監護 / 親権 / 親教育プログラム / 子ども養育支援 / 共同子育て |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年5月に、養育支援制度研究会と家族と法研究会は合同で、岩志和一郎早稲田大学教授から「親の養育権と児童保護の融和を目指してー続・ベルリンの点と線と網と」というテーマで児童福祉と司法との連携・協働に関するドイツの最新の大規模調査の報告をいただいた。2017年8月には、養育支援制度研究会において、FPICによる厚生労働省委託調査研究事業である「親子の面会交流の円滑な実施に関する調査研究報告書」の内容につき山口美智子先生からお話を伺った。2017年9月には、ホテルニューオオタニで開催されたLAWASIA東京大会の「養育費の算定及び効果的回収」のミニシンポジウムに参加し、香港・マレーシア・オーストラリア等の取組の報告を聞いた。2017年9月に、研究代表者は熊本家庭調停協会、鹿屋調停協会に招かれて「離婚と子どもー調停での円滑な解決を求めて」の講演を家事調停委員・調査官向けに行った。2017年12月には、養育支援制度研究会を開催し、2018年2月のシンポジウムに向けた報告・役割分担等の話し合いが行われた。2018年2月3日、日本司法書士連合会からの依頼で、研究代表者は「親権と子どもの権利について」兵庫県司法書士会館において講演とシンポジウムに参加した。2018年2月24日に、早稲田大学8号館地下102教室において、「『子の最善の利益』のための養育費や面会交流」というシンポジウムが開催され、養育費相談支援センターの事業が10年を経過したことから、再び養育費と面会交流の問題について改めて考える良い機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
兵庫県明石市で、泉房穂市長のリーダーシップの下で強力に進められている「こども総合支援に関する取り組み」は、まさに本研究の出発点となった「子ども養育支援ネットワーク」のモデル事業と言ってよいが、子どもを核とした街づくりを推進するものである。具体的には、妊婦全数面接、乳幼児健診、あかし子ども広場、児童相談所の設置、医療費・保育料の無償化、無戸籍者の支援、こども食堂などに加え、離婚前後の養育支援、2017年4月からの親子の面会交流支援事業(場所とひと、市職員によるコーディネート・支援事業の開始)、養育費確保支援として専門相談の強化や養育費確保に向けた講座開催も行いはじめた。明石市で働く専門職も、弁護士7名、社会福祉士8名、臨床心理士3名、精神保健福祉士1名など24名にもなった。すでに、養育支援制度研究会の働きかけにより、東京都文京区、足立区、新宿区、世田谷区などでは離婚や別居に伴う面会交流や養育費等の子ども養育に関するリーフレットの作成、相談機関の一覧、区民相談窓口の開設等の動きが出てきた。養育支援制度研究会や本研究代表者の「子ども養育支援基本法(仮)」の提言により、超党派の国会議員による「親子断絶防止法案」は、名称として「共同養育支援法」に変わり、子どもの養育をトータルに支援する内容へと少しづづシフトし始めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も、親子断絶防止法案の代替案である「子ども養育支援基本法」の制定に向けた取り組みをさらに強化するとともに、引き続き、東京都ひとり親家庭支援センター「はあと」での取組、東京都文京区、新宿区、世田谷区、渋谷区、足立区、北区などの23区を中心に、小規模の基礎自治体での面会交流、養育費などの子ども養育支援ネッとワークの形成に向けた具体的支援策の調査研究を行う。大規模自治体、広域自治体である都道府県レベルでの子ども養育支援ネットワーク形成の現状と課題、兵庫県明石市で開始したモデル事業が厚生労働省の母子自立支援事業や養育費相談支援事業との関係で、全国の基礎自治体にどのような条件と方法であれば広がる可能性があるか、そしてその限界はどこにあるかについて分析検討を試みる。そのために、韓国、台湾、シンガポールなどの近隣東アジアにおける自治体における面会交流や養育費の合意形成支援、合意実現支援の取り組みについても比較法的な研究や現地でのヒヤリング調査を行う予定である。また、オーストラリアでの家族関係センター(FRC)の発展や動向についても調査をしたうえで、日本版の「子ども養育支援ネットワーク」の形成に向けた具体的な提言に結び付けたいと考えている。明石市は、市役所職員による面会交流支援、養育費相談支援会の開催、養育費の立替払い制度の検討、児童扶養手当の毎月支給、児童相談所の開設、無戸籍者への支援など「こども養育支援」や「こどもを核としたまちづくり」を打ち出しており、その積極的な取り組みの背景や要因についても引き続き調査研究を進めることで、他の自治体への具体的な示唆や工夫の在り方について学びたいと思う。また、日本での大阪家庭裁判所、鹿児島家庭裁判所、京都家庭裁判所等ではじまった親教育プログラム、東京家庭裁判所での試行的な取組について調査研究を進めたいと考えている。
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Research Products
(8 results)