2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03439
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
神野 礼斉 広島大学, 法務研究科, 教授 (80330950)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 強制入院 / 身体拘束 / 成年後見 / 精神保健福祉法 / 世話法 / 民法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、法と精神医療31号に論説「強制入院と身体拘束に対する法的規制」を発表した。 2014年1月、わが国は障害者権利条約を批准した。同条約では、身体の自由および安全が保障され(14条)、暴力や虐待などは禁止されている(16条)。しかしながら、わが国において違法な強制入院や隔離、身体拘束は後を絶たない。ドイツでは、強制入院や身体拘束については、「居所指定」や「収容」をその職務として選任された成年後見人(世話人)に決定権限が付与されており、本人の意思に反する、あるいは本人の意思を欠く状況で実施される入院や身体拘束については、裁判所の許可が必要とされている(ドイツ民法1906条)。本稿では、ドイツの成年後見制度(世話法)を参考として、強制入院と身体拘束に対する法的対応のあり方について若干の検討を試みた。 ドイツにおいては強制入院や身体拘束について実体法上および手続法上極めて詳細な規定が用意されている。ドイツでは、民法上の収容制度とは別に、各州法が規定する公法上の収容制度もあるが、ドイツにおいて公法上の収容と民法上の収容は明確に峻別されている。民事法上の収容はもっぱら本人の利益保護のみを目的として許され、公共の利益保護や第三者の利益保護は警察法としての公法上の収容の課題となる。世話人の選任を要件とせず、裁判所によって命令される公法上の収容において、収容の必要性とその期間に関する決定はもっぱら官庁や裁判所だけに委ねられることになるが、官庁と被収容者が緊密な連絡をとり合うことは期待できない。これに対して民事法上の収容に関する決定は、裁判所の許可は要するものの、基本的には、「個人的世話の原則」の下で活動する世話人にその判断が委ねられる。立法者が民事法上の収容に公法上の収容とは異なる独自性を見出していたことは、わが国の法制度にも一定の示唆を与えるものであるように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この問題をめぐる日本法・ドイツの法状況について、条約の要請にも目配りしつつ、引き続き調査・検討を続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
わが国の成年後見人の権限には、身体に対する強制を伴う事項(例えば、手術・入院または健康診断の受診の強制、施設への入所の強制等)は含まれない。もっとも、2016年4月8日、「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が成立したが(同年5月13日施行)、この法律の11条3号によれば、「成年被後見人等であって医療、介護等を受けるに当たり意思を決定することが困難なものが円滑に必要な医療、介護等を受けられるようにするための支援の在り方について、成年後見人等の事務の範囲を含め検討を加え、必要な措置を講ずること」とされている。成年後見人の身上監護のあり方について引き続き検討を続ける。2017年5月に日本成年後見法学会の第14回学術大会においてこの点も含めた研究報告を行う予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] 日本における成年後見制度2016
Author(s)
神野礼斉
Organizer
2016年度忠北大学校法学研究所国際学術大会
Place of Presentation
韓国・忠北大学
Year and Date
2016-10-20 – 2016-10-21
Int'l Joint Research