2017 Fiscal Year Research-status Report
医療ネグレクトと「子どもの保証人」-予防法学的視点による医事法理論・システム構築
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16K03442
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
保条 成宏 中京大学, 法学部, 教授 (80252211)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 医療ネグレクト / 子どもの代理人 / 児童虐待 / 児童相談所 / 関係障害 / 関係調整的アプローチ / 子どもの家事事件 / 子どもの「最善の利益」 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療ネグレクトのなかには、弁護士である「子どもの代理人」による活動を通し、他の児童虐待事件と同様に、児童相談所長から家庭裁判所に対し親権喪失の審判などの申立てがなされ、家事事件化されるものもある。しかし、医療ネグレクト事案は、典型的な児童虐待事件とは異なり、日常的な監護には支障がなく、そこでの親子の利益相反的な関係は、親と医師との間で子どもの医療をめぐり意見の不一致が生じ、親が医師の治療方針に不同意となる局面において生じるものであり、子どもの生命・身体上の利益に関わってはくるものの、必要な治療行為さえ実施されれば解消される点において限定的で一過性のものといえる。それゆえ、本来、児童相談所は、子ども-親-医師の三面的で複雑な「関係障害」としての医療ネグレクトに対して、法的介入手続よりも自らのケースワーク機能に基づく関係調整的アプローチを優先させることにより、治療行為の実施に向けた合意形成を模索すべきである。したがって、医療ネグレクト事案の家事事件化が必要かつ不可避なケースにおいては、一般的な児童虐待事件にも増して「子どもの家事事件」としての位置づけが明確化され、実質的な当事者である子どもの「最善の利益」の観点からもっぱらその要保護性に主眼が置かれるべきである。 以上の観点から、医療ネグレクト事案の「子どもの家事事件」としての定位を実効化するうえで、「子どもの代理人」が親子に寄り添いつつその関係をつなぎ、また親と児童相談所との間でも関係調整をするために家事事件手続外において多様で非定型的な活動を実践することにより、実質的な当事者である子どもを置き去りにした両者の不毛な紛争やその膠着化を回避することが必要不可欠となることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度頭書に研究機関の異動があったため、研究課題への取り組みに必要な固有の蔵書の構築等、研究環境の整備に注力せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題への取り組みに必要な固有の蔵書の構築等、研究環境の整備を速やかに完了するとともに、連携研究者との協働関係を再構築し、より密接な連携をすすめる。
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Causes of Carryover |
前年度において現研究機関への異動が内定し、物品費については、残余の研究期間が3年に及ぶことに照らし、現研究機関において使用することが合理的であるため、研究計画の遂行に支障のない範囲でその使用を抑制し、次年度使用額が比較的多額に及んだところ、今年度においては、研究課題への取り組みに必要な固有の蔵書の構築等のために積極的に使用し、次年度使用額を比較的少額に抑えることができたと認識している。今回の次年度使用額については、連携研究者との協働のための旅費等の一部に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)