2019 Fiscal Year Research-status Report
医療ネグレクトと「子どもの保証人」-予防法学的視点による医事法理論・システム構築
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16K03442
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
保条 成宏 中京大学, 法学部, 教授 (80252211)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 子どもの代理人 / 子どもの権利条約 / 児童虐待防止法 / 幸福追求権 / アドボケイト |
Outline of Annual Research Achievements |
「子どもの代理人」として医療ネグレクト事案において法実践を展開する弁護士2名から聞き取りを行うとともに、「子どもの権利条約」における「子どものための法理」やこの基礎にある法構造を分析し、条約が前提とする子ども像や権利構造に照らして「子どもの代理人」像を明らかにした。これによれば、児童虐待をめぐっては、2000年代に児童虐待防止法の制定を嚆矢として、児童相談所による行政上の法的介入手続が実効化し、またこれに伴い家庭裁判所による司法上の法的介入手続が賦活化していったが、こうした動きを先導したのが「子どもの代理人」を実践する有志の弁護士であった。こうした「子どもの代理人」としての弁護士は、「子どもの最善の利益」の確保をその実践の第一義に据え、既存の法制度・慣行に捕らわれることなく、いわば手探りの状態で多様な非定型的・福祉的な支援を「全人的存在としての子ども」のために展開するなかで、法的介入手続のチャンネルの確立を促してきた。そして同時に、そのチャンネルが一定の確立をみた後にも、法的介入手続の内と外とを問うことなく全人的な見地から、「幸福追求権」の主体である子どもやその「生の当事者性」のための「アドボケイト」として多様な支援を実践してきたといえる。このようにして、「子どもの代理人」は、「全人的存在としての子ども」が生きる実社会のフィールドに根ざしたいわば「開いた法システム」において広汎な法実践を展開し、またこれに基づいて「実践知」や「暗黙知」を蓄積してきたということができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
補助事業期間2年目の2017年4月に研究機関が福岡教育大学から中京大学に変更になり、この前後において、①研究資料の福岡教育大学から中京大学への移管・整理、②福岡教育大学の物品管理関係規程等により移管できなかった研究資料の再収集・整理、などにより当初計画の変更・遅延を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度が補助事業期間の最終年であったが、研究課題の進捗に遅れが生じたことから、補助事業期間延長承認申請を行い、受理・承認されたところである。新型コロナウィルス感染拡大のなか、連携研究者・研究協力者との対面での協働が困難となっているが、電子メール等を最大限活用しつつ作業を進捗させることとしたい。
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Causes of Carryover |
補助事業期間において研究課題の進捗に遅れが生じ、研究成果報告書をとりまとめ刊行するための作業を十分に遂行することができず、これに充てるべき経費が未執行となった。補助事業期間を2020年度において1年延長することが承認されたため、当該年度内に研究成果報告書を確実に刊行するべく、未執行額を使用することとしたい。
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Research Products
(2 results)