2021 Fiscal Year Research-status Report
医療ネグレクトと「子どもの保証人」-予防法学的視点による医事法理論・システム構築
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16K03442
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
保条 成宏 中京大学, 法学部, 教授 (80252211)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 子どもの権利 / 親の権利 / ドイツ連邦共和国基本法 / 児童虐待関係法制 / 親子法制 / 関係性の法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツにおける児童虐待関係法制は、日本のそれが主として「児童福祉法」「児童虐待の防止等に関する法律」などの児童福祉・児童虐待に特化した個別・具体的な立法に基づき、かつ児童相談所による一時保護などの行政的介入を主軸としてきた点に比して、基本的な構造をかなり異にするものである。すなわち、その特色は、「親子関係事件」(Kindschaftssache)に関するより一般的な民事実体法・手続法上の親子法制を主軸とし、かつ裁判所による司法的介入を基柱として構築されてきた点にある。したがって、親子関係事件としての側面をもつ医療ネグレクト事案をめぐり、ドイツにおける法的対応の特色・動向を探知していくうえでは、民事法領域において親子法制がどのように発展してきたか、そしてさらにいえば、それが親と子どもの「関係障害」に対処し、両者の間を調整・修復しつなぎ直す「関係性の法」としていかに具現化してきたか、という点に着目する必要がある。 第2次世界大戦後後のドイツにおいて児童虐待関係法制が発展していく過程では、以上のように民事法上の親子法制がその基軸を担ってきたのであり、とりわけ親子の関係性を直截的に規律する実体法である民法においては、「親権の壁」を超克することが必然的に課題となった。そして、ドイツがこの課題に取り組むうえでは、「親の権利」(Recht der Eltern)を規定するドイツ連邦共和国基本法6条2項との関係が焦点となり、連邦憲法裁判所は、同項をめぐって積極的に判例を展開した。すなわち、連邦憲法裁判所の判例は、「親の権利」を相対化する反面において、「子どもの権利」を基本法上に定位化した。これにより、親子の間を調整・修復する「関係性の法」としての親子法制の構築に向けて憲法的要請が明晰化されていったのであり、以上の過程を分析・検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
補助事業期間2年目の2017年4月に研究機関が福岡教育大学から中京大学に変更になり、①研究資料の福岡教育大学から中京大学への移管・整理、②福岡教育大学の物品管理関係規程等により移管できなかった研究資料の再収集・整理、などにより当初計画の変更・遅延を余儀なくされた。そのため、2019年度が補助事業期間の最終年であったものの、研究の進捗に遅れが生じていたことから、補助事業期間延長承認申請を行い、承認された。しかしながら、2020年度においては、新型コロナウイルス感染拡大により、研究活動に対しさまざまな制約が生じるとともに、中京大学の授業におけるオンライン形式の導入・実施に伴い繁忙化し、十分な研究時間を確保することができなかった。そこで、特例的に補助事業期間延長承認申請をを再度行い、承認されものの、2021年度においても研究状況を大きく好転させるだけの条件を整えることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間の延長が再度承認された2021年度においても、新型コロナウイルス感染拡大により、研究の進捗の遅れを十分には挽回できなかったことから、再々度の補助事業期間延長承認申請を行い、承認されたところである。新型コロナウィルス感染の終息見通しが立たないなか、連携研究者・研究協力者との協働や、関係者への聞き取り調査が対面形式では困難となっており、引き続き電子通信手段等を最大限活用しつつ研究を進捗させることとしたい。
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Causes of Carryover |
補助事業期間において研究課題の進捗に遅れが生じ、研究成果報告書をとりまとめ刊行するための作業を十分に遂行することができず、これに充てるべき経費が未執行となった。補助事業期間を2020・2021年度に続き2022年度においても1年延長することが承認されたため、当該年度内に研究成果報告書を確実に刊行するべく、未執行額を使用することとしたい。
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