2018 Fiscal Year Research-status Report
クリーンエネルギー法制の構築に向けた日米比較研究―災害時の環境汚染を契機として―
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16K03443
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小林 寛 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (30533286)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アメリカ合衆国 / 再生可能エネルギー / 水力 / 地熱 / バイオマス |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、2017年度(太陽光・風力)に続き、アメリカ合衆国における再生可能エネルギーの普及促進に関する近時の動向と法的課題について、水力・地熱・バイオマス・バイオ燃料を中心として日本への示唆を見出す研究を行った。この研究は、信州大学経法論集4号(2018年10月)及び6号(2019年3月)において研究論文として発表した。 また、第22回環境法政策学会(2018年6月16日)において、「アメリカ合衆国の再生可能エネルギー法制に関する考察―RPSとFITの関係性を中心として―」と題する研究発表を行った。 例えばバイオマスについて、アメリカ合衆国において特徴的なのは、バイオ燃料に関するRFS(再生可能燃料基準)が連邦法の下で確立しているだけでなく、州レベルでLCFS(低炭素燃料基準)が採用されている場合もあるということである。これにより、精製業者等は、バイオマス資源による再生可能燃料を輸送燃料に混合させるか、またはRINと呼ばれるクレジットを他者から取得することによってRFSに係る義務を遵守しなければならないとされる。特に後者の方法は市場原理に基づくものであり効率的に再生可能燃料の導入を促進できると解されることなど複数の事項を明らかにした。 また、再生可能エネルギーの普及促進は、環境問題としての地球温暖化に対応し低(脱)炭素社会の実現に寄与するものではあるが、これによって別の環境問題が発生することが明らかとなった(環境(低炭素社会)と環境(人間の生活環境や自然環境(自然共生社会))の対立的な問題)。例えば、アメリカ合衆国においては、集合型太陽熱発電事業、風力発電事業および水力発電事業による絶滅危惧種に対する影響が問題となったし 、地熱発電事業と歴史的文化資源との関係が問題となったことがある。このような問題を踏まえて、共生のための基本的視点を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度(太陽光・風力)に続き、2018年度は、水力・地熱・バイオマス等に焦点を当てて、アメリカ合衆国における再生可能エネルギーの普及促進に関する近時の動向と法的課題を明らかにし日本への示唆を見出す研究論文を発表した。 また、2018年度は、研究者が所属する環境法政策学会において研究発表を行った。このように、2018年度中に必要十分な研究実績を残すことができた。 以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、これまでの研究の過程で明らかになったアメリカ合衆国における再生可能エネルギーに関する複数の紛争事例について事案や判決の内容などをより詳しく調べ、日本における紛争事例との比較考察を行う計画である。 そのために、引き続き、文献調査と調査により得られた文献の精査を行うと共に、必要に応じて、国会図書館などに出張し調査を行う計画である。
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Causes of Carryover |
2017年度から2018年度までの研究の過程において、アメリカ合衆国における再生可能エネルギーに関する複数の紛争事例に接した。すなわち、再生可能エネルギーの普及促進は低(脱)炭素社会の実現に寄与するものではあるが、これによって別の環境問題が発生することが明らかとなった(環境(低炭素社会)と環境(人間の生活環境や自然環境(自然共生社会))の対立的な問題)。これらの紛争事例について事案や判決の内容などをより詳しく調べるべく、研究期間を1年延長し、文献調査・検討を引き続き行う必要が生じた。2018年度は水力・地熱などといった個別の再生可能エネルギーに特有の法的課題の研究に焦点を当てた研究論文を作成・発表したため、紛争事例の研究に十分な調査時間を充てることが出来なかった。以上が次年度使用額が生じた理由である。 そこで、引き続き、紛争事例に関する文献調査と得られた文献の精査を行うと共に、必要に応じて、国会図書館などに出張し調査を行う計画である。すなわち、次年度使用額については、文献の複写費用や出張旅費などに充てる計画である。
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Research Products
(5 results)