2016 Fiscal Year Research-status Report
商品デザインの保護に関する知的財産法横断的考察――競争政策を手掛かりに
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16K03452
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
泉 克幸 京都女子大学, 法学部, 教授 (00232356)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 商品デザイン / 不正競争防止法 / 著作権法 / 商標法 / 意匠法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 概要…商品デザインを保護する代表的な知的財産法には、意匠法、不正競争防止法、著作権法、商標法がある。本研究は、そうした個々の法律を独立して取り上げるのではなく、商品デザインの保護について知的財産法を横断的に考察するものである。本研究は4年計画で実施するものであり、今年度はその1年目に当たる。交付申請書の「実施計画・方法」に従い、今年度は4つの具体的テーマのうち、①著作権法と意匠法の棲み分けの問題、②商品デザインを商標法で保護することの問題、に取り組んだ。そのため、必要な資料の収集・整理、企業実務家や弁護士、研究者に対するヒアリング、研究会への出席等を行い、その後、それらをまとめて論文等を執筆・公表した。 2 具体的成果…今年度、研究成果として公表した論文とその内容・意義は次のとおりである。 (1)「周知商標をパロディ的に使用した登録の可能性」速報判例解説(別冊法学セミナー)20号277頁:本稿はフランク三浦事件(知財高判平成28年4月12日)の判例研究である。本件ではいわゆるパロディ商標の登録可能性が、商標法4条1項10号、11号、15号、19号との関係で問題となったが、知財高裁がそのいずれにも該当しないとして登録が認められたものである。本件は、商品デザインの1つの構成要素となり得るパロディ商標の登録の是非および権利の範囲といった重要な問題と関連している。 (2)「展示会への出展品の形態模倣と不正競争防止法2条1項3号」L&T75号73頁:本稿はスティック形状加湿器事件(知財高判平成28年11月30日)の判例研究である。本稿では本件で争点となった不正競争防止法における「3号の保護期間の開始時期」および「保護期間の終期の起算点」の問題を中心に論じたが、商品デザインの著作権法による保護、その際に生じる意匠法との棲み分けの問題を分析・検討する際の有益な素材となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は本研究課題の4つの具体的テーマのうち、①著作権法と意匠法の棲み分けの問題、②商品デザインを商標法で保護することの問題を取り上げることとしていた。そして、具体的作業として両テーマについて、必要な資料の収集・整理、企業実務家や弁護士、研究者に対するヒアリング、研究会への出席等〔Step1〕、テーマ①については、それら資料や知見の分析・検討〔Step2〕を計画していた。 実際の作業として、関連する資料(国内外の図書、雑誌、審判決例、政府・公共機関・シンクタンク等が作成した報告書等)の収集(適宜、他大学の附属図書館や国会図書館に出張した)、研究会への出席・発表(主なものとして知的財産判例研究会(比較法研究センター主催)、同志社大学知的財産法研究会)、他の研究者や実務家(弁護士、弁理士、企業の実務家)との意見交換などを行った。 テーマ①およびテーマ②のいずれについても、部分的ではあるにせよ、上記「研究実績の概要」に挙げたとおり、具体的成果を公表すること(この作業はStep3に当たり、テーマ①・②とも、次年度に計画していたものである)ができたことは、本研究が概ね順調に進展していることの証左である。 他方で、テーマ①のうち、トリップ・トラップ(TRIPP TRAPP)事件控訴審判決(知財高判平成27 年4月14 日)以降も相次いで出されている応用美術や実用品を巡る著作権法分野の判例の動向を分析・検討する成果、また、テーマ②については、パロディ商品以外の商品デザインについて分析・検討した成果を公表するには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、本課題の具体的テーマ③「規制の根拠を『混同』に求めるのか『不正使用』に求めるのか問題」に着手する。その際、1つのポイントは、交付申請書においても述べたように、商標の不正利用との関係で商標法上の「類似」概念を再検討することが重要であり、出所混同は生じないが商標の不正な使用に当たるケースに対しては商標法ではなく不競法によって全面的に対処することが予定されているのか、あるいは、商標法上の保護が一定の範囲で及ぶのかということである。具体的作業として、以下のようなStep1を実施する。関連する国内外の図書、雑誌、審判決例、政府・公共機関・シンクタンク等が作成した報告書等の収集、企業専門家からのヒアリング、弁護士や研究者との意見交換、研究会やシンポジウムへの参加。 次に、テーマ①および②について、今年度成果に含めることができなかった領域について(応用美術・実用品に関する最近の判決例を総合的に分析し、意匠法の保護領域との関係を検討すること、また、商品デザインが識別力を獲得する可能性や商標として保護した場合の独占の問題など)、成果を公表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は27,889円の次年度使用額が生じた。これは、年度末に購入予定の図書および雑誌の一部につき、発行の遅れまたは到着に時間を要したことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記購入予定の図書および雑誌につき、同額での速やかな購入を計画している。
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