2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03454
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
上石 圭一 追手門学院大学, 社会学部, 教授 (80313485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 浩 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (30324958)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 司法アクセス / 性的マイノリティ / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる2016年度は、性的マイノリティに関連する集会に参加する一方で、性的マイノリティ自体および性的マイノリティの権利擁護運動に関連する文献を収集し、文献研究を中心として行い定期的に研究会をもった。その中で、性的マイノリティの司法アクセスをめぐる問題として、大きく次の二つの点に焦点を当てる必要性が明らかになった。 一つは、同性婚に代表される性的マイノリティの家族生活に係る問題である。同性婚については、自治体において、事実婚として、一定の保護を与える動きが出てきてはいるが、子ども(出産、養子)を設けることについての理解は、まだ広がっているとは言いがたい。とりわけ、男性同士の同姓婚の場合にはより顕著に現れると考えられる。この問題は、他方では、理想の「家族像」や、法の前提とする「家族」概念とも衝突する可能性のあるものであることから、行政・司法関係者の理解が得られにくいという点で、司法アクセスに関わりうる問題である。 第二に、LGBTといっても、性指向の要素の強いLGBと性自認の要素の強いT、LGBT以外の性など、性的マイノリティは多様であるから、その全体を取り上げて検討することは困難であることが明らかになった。また、これに関連して、司法アクセスを純粋に司法にアクセスするという点に限定するよりは、司法アクセスの根本にある権利擁護・実現をより重視して、行政を通しての解決という点も含めて検討したほうが、より実りの多い成果が出そうだということが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、性的マイノリティの権利擁護に関連する文献研究から始め、2016年度秋ごろから関連団体へのインタビューを実施する予定でいた。だが、文献研究を行い、研究メンバーでその内容についてい議論する中で、より詳細な文献研究を行い、問題の焦点をもっと絞る必要性が出てきたため、初年度に当たる16年度は、文献研究の比重を高めたことによる。とりわけ、文献研究をする中で、LGBTのうち性指向の要素の強いLGBと性自認の要素の強いT、LGBT以外の性という具合に、性的マイノリティも多様であるから、研究対象を絞る必要がある戸という問題が強く出てきたことによる。とは言え、対象となるケースを絞ることによって対応するので、全体的には大きな問題とはならない。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度の研究調査を通して、直接的な司法アクセスに限定するよりは、権利擁護のために当事者や支援者がとる行動という観点から、行政機関による相談や支援も含めて調査対象とする方がよさそうだとわかったことから、インタビューの対象は、当初予定していた当事者、支援者だけでなく、行政機関の担当者も、検討対象とする。 2017年度中に、複数の性的マイノリティの支援団体や運動団体に対してインタビュー調査を行い、そこから、スノーボール式に、当事者や支援者へのインタビューを行ってゆく。この調査は、18年度半ばまで続けることを予定している。
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Causes of Carryover |
研究過程において、本格的なインタビュー調査を行う前段階として簡易的なインタビュー調査を行った結果について検討する中で、性的少数者といっても、その内容するものが多様であるために、インタビュー調査結果を詳細に検討するには、データを文字化した上で、テキスト分析を行う必要があることに気づいた。そこで、まだ調査が本格化していない初年度の使用額を押さえ、次年度にテキスト分析用のソフトを購入する費用に当てることにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度はテキスト分析のためのソフトを1セット購入する。16年度に生じた次年度使用金の使用用途は、このテキスト分析用のソフトの購入に当てるものである(調査が本格化する夏ごろに購入を予定)。それ以外については、当初の予定通りである。
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