2018 Fiscal Year Research-status Report
新しい個人情報保護法制とグローバル企業の情報法コンプライアンスの研究
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16K03455
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
高野 一彦 関西大学, 社会安全学部, 教授 (40553128)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 個人情報保護 / プライバシー / コンプライアンス / 営業秘密 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、企業に自律的な管理体制を求める法制度に大きな変化があった。 情報法分野においては、2017年5月30日、わが国の個人情報保護法が施行され、また2018年5月25日にEU一般データ保護規則(GDPR)が発効した。2017年1月から始まった日本・EU間のデータ保護の十分性に関する交渉は、2018年1月23日に相互認証が決定し、日本・EU間の個人データの自由な流通が始まることとなった。また、不正競争防止法における営業秘密侵害罪の厳罰化による不正取得者対策、公益通報者保護法におけるW認証制度の運用開始、さらに域外適用を規定した海外法など、企業において再考すべき様々なコンプライアンス上の課題が散見されるようになった。 企業経営をめぐる、このような法制度の変化を俯瞰的すると、企業は違法・権利侵害行為を未然に防ぐための対策とともに、顕在化時の法人としての違法性を阻却し、又は罰金・制裁金・課徴金を低減させ、若しくはレピュテーショナル・リスクをコントロールすることを目的とした、「リスクマネジメント・システム」としてのコンプライアンス・プログラムの定立が求められるようになったものと思料される。 2018年度は、このような変化を背景に情報法に軸足を置きつつ、コンプライアンス分野を総合的に研究し、グローバル企業のコンプライアンス経営のあるべき姿を探求した。具体的には、個人情報法保護委員会委員長との意見交換(3回)、日本経営倫理学での研究(8回)、中央大学との社会安全政策論研究ー法人処罰とコンプライアンス(3回)などの研究活動を行った上で、ACBEE特別シンポジウム(11/5)、情報法制研究所シンポジウム(2/17)での研究報告、社会安全学入門(ミネルヴァ、2018)、Science of Societal Safety(Springer、2018)の分担執筆などによる発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、わが国の情報法制とグローバル企業のあるべきコンプライアンス経営への提案を目的にしている。わが国の個人情報保護法は2020年に改正を予定しているが、これは「日本・EU間の相互の円滑な個人データ移転を図る枠ぐみ」が大きく影響することになる。本枠組みはEUにより2019年1月23日に決定し、その評価は2019年10月に開催予定の国際プライバシーコミッショナー会議(ICDPPC)を待つ必要がある。 本研究は、2016~18年の3年の研究期間を予定していたが、上述の理由により、2019年までの4年間に研究期間の変更を申請し、ご承認いただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、以下の3つのテーマを探求することによって、本研究のテーマ「新しい個人情報保護法制とグローバル企業の情報法コンプライアンス」への提言をまとめる予定である。 第一は、わが国の個人情報保護法改正への提言である。2019年1月に再開した堀部政男情報法研究会における研究を基盤として、GDPRを始め欧米諸国のデータ保護法制を比較研究し、2020年に予定されているわが国の個人情報保護法改正への提言を行う予定である。 第二は、コンプライアンスの視点からの法人罰の在り方に関する研究である。中央大学との社会安全政策研究において、刑法・刑事訴訟法の研究者とのコンプライアンスに関する共同研究を行い、法の有効性の視点から個人情報保護法における法人罰(罰金・制裁金・課徴金など)を提言をする予定である。 第三は、グローバル企業のコンプライアンス研究(事例研究)である。日本経営倫理学会、同学会法務コンプライアンス研究部会、経営倫理実践研究センター(BERC)、経営倫理士協会(ACBEE)において、企業コンプライアンスのあるべき姿の探求を行う。具体的には、BERC会員企業167社との研究から、マネジメント・システムとしての実践的かつグローバルなコンプライアンス・プログラムを探求する。
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Causes of Carryover |
本研究は、わが国の個人情報保護法の改正に関する提案を行うことを目的の一つにしている。わが国の個人情報保護法は2020年に改正を予定しているが、これは「日EU間の相互の円滑な個人データ移転を図る枠ぐみ」と、2019年10月に開催予定の国際プライバシーコミッショナー会議(ICDPPC)における評価が影響することとなる。従って、2016~18年の3か年の研究期間の1年延長を申請し、ご承認頂いた。 最終年度となる2019年度は、堀部政男情報法研究会、日本経営倫理学会と関連団体の研究会、中央大学の社会安全政策論研究会の参加のための交通費及び参加費、並びにアルバニアで10月21-24日に開催予定の「the 41st International Conference of Data Protection and Privacy Commissioners(ICDPPC)」における議論内容の情報収集に研究費を使用する。
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