2017 Fiscal Year Research-status Report
アジア太平洋地域における国際協力未発達の国内政治要因
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16K03462
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋渡 展洋 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (10228851)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際政治経済 / 貿易協定 / 資本自由化 / 経済業績評価 / 政治体制 / 民主制 / 権威主義体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.本年度は 貿易協定の複雑さ(WTO plus の範囲・完全実効までの期間)の政治体制別要因の部分の研究を終了した。「深く・長い」貿易協定は21世紀に入ってからの貿易協定の特徴をなす。時系列のパネル分析を実施することにより得られた成果は、資本自由化が進展し、国際金融変動に伴う不況を経験した「先進民主国」が、国内経済改革の一環として、深く・漸進的な貿易協定を締結するというものである。その理由は国際金融不況に直面して、先進諸国の政府首脳は国内の経済構造改革を通した国際競争力の強化による貿易・投資の拡大による経済成長戦略を選択するためである。その際、当然、国内の多国籍企業の利害を反映した協定を指向することが、深い貿易協定を推進する理由である、貿易の自由化に反対する国内利害を反映することが、完全実施までの期間が長い、漸進的な協定を指向させる。 2.これに対して、「新興民主国」も「深く・長い」貿易協定の締結を締結するが、その契機は国際金融不況ではなく、単に貿易投資主導の経済成長を指向するためである。その結果、国際金融変動と「深く・長い」貿易協定と関連がない。即ち、選挙により指導者が経済業績評価される度合いの違いが両民主制違いである。 3.これに対して、「競争的権威国」「一党支配国」では、政治指導者はその経済政策の問われることも、様々国内利害が自由に代表されることもないため90年代の自由貿易協定の代表である「浅く・短い」貿易協定を締結が中心で、21世紀型の「深く・長い」協定は締結しない。 4.従来の貿易協定の先行研究は、貿易協定の質を問わず、その締結数と政治体制の関係を分析するか、質に着目して国内の経済改革の一環としてそれを推進すると主張する場合、政治体制の影響を見ていないかのいずれかで、貿易協定の質と政治体制による国内構造改革との関連性を明確にしたのが本研究の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.本年度を持って このプロジェクトの3本の柱の一つである。貿易協定の複雑さ(WTO plus の範囲・完全実効までの期間)の政治体制別要因の部分の研究を終了した。 2.更に、本年度はプロジェクトの3本の柱の2つ目である、先進民主国の経済援助や経済制裁が、前者は、先進諸国と新興民主諸国の「深く・長い」貿易協定を推進させ、後者は、先進諸国と権威制諸国の「深く・長い」貿易協定を困難にしているという仮説の検証のためのダイアード・パネルデータの整備を行い、それをほぼ終えた。 3.加えた、本年度はプロジェクトの3本の柱の3つ目である、民主国の間の「深く・長い」貿易協定の交渉は、それらの国々の間の政治的・軍事的緊密さを基盤としており、さらに、そうした政治的・軍事的緊密度を一層深めるという仮説実証のためのデーターセット作成に入った。具体的には、共同軍事行動や共同軍事演習など、これまで体系的なデータのない領域でのデータセット作成を続けた。これは来年度も継続される。
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Strategy for Future Research Activity |
1.来年度前半で、本プロジェクトの2本目の柱である、先進民主国の経済援助や経済制裁が、前者は、先進諸国と新興民主諸国の「深く・長い」貿易協定を推進させ、後者は、先進諸国と権威制諸国の「深く・長い」貿易協定を困難にしているという仮説の検証を終える予定 2.来年度を通して、最初の柱である貿易協定の複雑さ(WTO plus の範囲・完全実効までの期間)の政治体制別要因の部分の計量分析を補完するアジア太平洋での記述的事例分析、および先進民主国の経済援助や経済制裁が「深く・長い」貿易協定に与える影響についての記述的事例分析終える予定である。実はこれらの事例分析の資料、2次資料や新聞記事の検索は昨年度より引き続き行っており、来年度で終了するめどは立っている。 3.民主国の間の「深く・長い」貿易協定の交渉は、それらの国々の間の政治的・軍事的緊密さの相関関係に関する、データーセットの完成、更に事例研究のための資料収集を来年度も引き続き行う。
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Causes of Carryover |
本年度注文の書籍の新刊到着が遅れているため
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