2017 Fiscal Year Research-status Report
国会の議事日程決定権限や首相の補佐体制が首相の指導力に及ぼす影響の実証的研究
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16K03463
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
竹中 治堅 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70313484)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 首相 / 内閣官房 / 政治改革 / 省庁再編 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、次の三つを明らかにすることを目的としている。 (1)戦後日本の政治過程で、選挙制度、派閥、首相の補佐体制の変遷が首相の国会に対する人事権や与党閣外議員の政策情報量に作用することで国会の議事日程権限が首相の指導力に及ぼす影響力をどのように変化させてきたのか明らかにすること。 (2)自民党の事前審査制が発展し、実効性が担保されていく過程を明らかにすること。まず、事前審査制が派閥の進化や総務会や 部会等における派閥本位の人事の制度化と平行して発展したのか、また、全派閥の事前審査への関与が実効性を担保したのか検証する 。さらに現行の選挙制度導入後、派閥衰退や首相の人事権強化が事前審査制のあり方をいかに変容させたのか分析する。(3)英国と比較した場合の日本の首相の国会の委員長ポストなどに対する人事権の行使のあり方などの特徴を明らかにすること。 これまで1994年の選挙制度改革以降、首相の自民党における人事権が全般的にどのように変わって来たのか検証し、現在も人事権の 強化は続いていることを明らかにした。さらに、2001年の省庁再編以降、内閣官房の組織が急拡大したこと、政策立案過程への関与を深めていることを明らかにした。 55年体制のもとにおける国会の議事日程権限が首相の指導力に及ぼした影響を明らかに するため、派閥の影響力が国会の議院運営委員会、常任委員会、自民党の国会対策委員会、総務会、部会に浸透して行ったのか明らかにするための資料の収集を続けた。また、政治改革以後の首相の政府内および与党内への影響力の浸透を測るための視角について考察を深めた。以上の検証や考察を行うため元官僚にインタビューを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究には三つの目標がある。 (1)戦後日本の政治過程で、選挙制度、派閥、首相の補佐体制の変遷が首相の国会に対する人事権や与党閣外議員の政策情報量に作用することで国会の議事日程権限が首相の指導力に及ぼす影響力をどのように変化させてきたのか明らかにすること。 (2)自民党の事前審査制が発展し、実効性が担保されていく過程を明らかにすること。 (3)英国と比較した場合の日本の首相の国会の委員長ポストなどに対する人事権の行使のあり方などの特徴を明らかにすること。 (1)や(3)に対応する形で、これまで1994年の選挙制度改革以降、首相の自民党における人事権がどのように変わって来たのか、検証を進めてきた。省庁再編以降、首相の補佐機構である内閣官房の組織が拡大し、政策決定への関与を示すことができた。 また、55年体制のもとにおける国会の議事日程権限が首相の指導力に及ぼした影響を明らかにするため、派閥の影響力が国会の議院運営委員会、常任委員会、自民党の国会対策委員会、総務会、部会に浸透して行くことを明らかにするための資料の収集を始めた。また政治改革以降、政府内および党内における首相の影響力の拡大を図る分析視角を考案した。 さらに、(2)に対応する形で事前審査制について、自民党政権の初期の政策形成過程をさぐり、事前審査は行われていたものの、事前審査制手続きの完了が必ずしも党議拘束の実現を意味していたわけではないことを確認した。以上、三つの面でそれぞれ研究が進展しているため、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も1994年の選挙制度改革以降で首相の自民党における人事権が全般的にどのように変わって来たのか検証を進めていく。特に改革後の閣僚ポストに対する首相の人事権を中心にこれまで検証してきたが、今後はそれ以外の政府の役職や自民党の役職に対する首相の人事権のあり方の変化の検証を進めていく。 2001年省庁再編以降の首相の政府内における指導力の変化をさらに把握する。 さらに、国会の議院運営委員会、常任委員会、自民党の国会対策委員会、政務調査会部会、総務会における派閥の影響力の変遷を検証するための資料の 収集を引き続き進め、検証を行いたい。また衆議院公報及び自民党の機関誌を活用して部会の開催頻度を明らかにしたい。 また、事前審査制については、池田政権以降の手続きの実態の解明を進め、特に、事前審査手続きの完了とともに党議拘束がかかるようになった時期を明らかにしたい。首相の政策決定過程における影響力がいかに上述の各組織に影響されたのかについて、各組織における派閥の影響力の浸透の程度の変化を時系列的に検証する。検証を進める過程ではすでに利用可能な文献資料に加え、特に自民党の政治家へのインタビューを積極的に進めていく。 さらに、国会が首相に対して持つ影響力、首相の持つ制度的権限などを総合的に勘案し、日本の議院内閣制のもとにおける首相の指導力の変遷を包括的に把握するための分析視角を考案し、分析を行いたい。
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Causes of Carryover |
官僚のインタビューが当初予定していたよりも時間を要さず、次年度使用額が生じた。 2018年度に行うインタビューの速記録代として使用することを計画している。
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