2016 Fiscal Year Research-status Report
政策を分析視角としたドイツ政党システム流動化の研究
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16K03465
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
横井 正信 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 教授 (10220542)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ドイツ / 政党政治 / 比較政治学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28(2016)年度においては、近年のドイツにおいて大政党の勢力衰退、無党派層の増大、ポピュリズム政党の台頭等に見られる政党システムの流動化が2013年連邦議会選挙とその後の連立形成においてどのような影響を与えたかについての論点整理作業を行った。そのうえで、2013年に形成された第3次メルケル大連立政権における主要政策課題に関する議論がそのような政党システムの流動化からどのような影響を受けているのかについての分析研究をおこなった。特に、二大政党の間での表面上の対立と実際の政策的収斂という観点の下で、ドイツ統一以降長期的課題となってきた年金改革政策について、1990年のドイツ統一から第3次メルケル政権前半期までに関する詳細な分析を行い、その成果については学術論文として発表した。 ドイツにおいては、政権3年目は次期連邦議会選挙を1年後に控えた年であり、当該立法期の重要政策に関する政策実施が事実上終了し、連邦議会選挙に向けての諸政党の活動が開始される時期であることから、上記の分析研究と並行して、平成28(2016)年12月に10日間程度ドイツでの現地調査を行った。この現地調査においては、現政権の中心であるキリスト教民主同盟(CDU)の党大会(エッセンで開催)を傍聴し、2015年以降の難民の大量流入とともに最大の政策争点となった難民政策が同党党首であり首相でもあるメルケルの支持と安定度にどのような影響を与えているかについての調査を行った。また、ミュンヘンにおいて、CDUの姉妹政党でありバイエルンの地域政党でもあるキリスト教社会同盟(CSU)のバイエルン州議会議員と同党機関誌副編集長に対して、党の現状と連邦議会選挙の見通しに関するインタビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、1990年のドイツ統一以降の同国を取り巻く内外の構造的変動が、かつては「政党国家」とも称された安定した政党システムを有していたドイツにおいて、近年顕著となった大政党の支持基盤の溶解、政党支持の多元化と無党派層の増大、主要政党間の政策の収斂化といった政党システムの流動化とどのような関係にあるのかを具体的な政策対応の面から実証的に明らかにすることにある。 このため、まず平成28年度においてはドイツの政党システムに決定的な影響を与えるとされた2013年連邦議会選挙とその後の政権樹立から3年を経過した時点で、政党システムの流動化が2013年連邦議会選挙戦とその後の連立形成においてどのような影響を与えたかに関して、現在ドイツで公刊されつつある諸文献を収集し、それらの文献において指摘されている論点の整理を行った。その整理作業は概ね順調に進行し、それを踏まえて学術論文を公表した。 また、本研究においては、政党システムの流動化と諸政党の主要な政策課題に対する対応状況の相互的関係を、研究者による分析だけではなく、行政官庁や政党等によって作成・公表される諸文書、世論調査資料、メディア資料、主要政党所属者等に対するインタビュー等によって明らかにすることも目指している。この点においても、ドイツでの現地調査を実施し、主要政党の党大会における党首・執行部選挙の観察や党大会代議員・州議会議員等に対するインタビューを実施できた点からも、研究は概ね順調に進捗していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
主要な政策課題への現政権の対応のあり方は、ドイツの政党システムの変化を反映し、また、それに大きな影響を与えるものであると言える。この点を念頭において、平成29年度においては、引き続きメルケル政権の年金改革政策についての調査研究を継続するとともに、前年度に行った論点の再整理と現地調査の結果を基礎として、メルケル政権における主要政策の実施が、本年9月に予定されている連邦議会選挙戦や選挙後に樹立される新政権にどのような影響を与えるかを調査分析する。 また、連邦議会選挙前後から次期連立政権が発足すると予想される同年末までの間に、10日~2週間程度にわたって同選挙とその結果に関する現地調査を行う。この調査においては、可能であれば連邦議会選挙の直前ないし次期連立政権樹立の前後に行われる(主としてCDU/CSU及びSPDの)党大会を傍聴するとともに、代議員等党大会関係者に対してインタビューを行う。その際には、両大政党の支持基盤の変化に加えて、①CDU/CSUと緑の党の政策的距離がどの程度接近し、2017年連邦議会選挙以降に連立を形成できる可能性がどの程度高まったか、②SPDが近年顕在化した党勢の後退傾向に対してどのように対処したか、また、左翼党との関係に変化が生じ、緑の党と三党で連邦議会における左派多数派を形成できる可能性がどの程度高まったかという点を中心に調査を行う(各党の党大会の開催場所については現時点では未定である)。さらに、連邦議会選挙前後におけるメディアの報道資料、世論調査機関による調査分析文書、アデナウアー財団、エーベルト財産等、主要政党の運営する研究財団によって作成された選挙資料等を収集する。
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Research Products
(1 results)