2017 Fiscal Year Research-status Report
自衛隊の災害派遣の史的考察-戦後政治における「国防」と「防災」の交差-
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16K03467
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
村上 友章 流通科学大学, 経済学部, 准教授 (80463313)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 福井地震 / 伊勢湾台風 / 憲法九条 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究実績としては、第一に、2つの論考を発表したことがあげられる。まず、「自衛隊と憲法改正問題」を佐藤史郎・川名普史・齋藤孝祐編『日本外交の論点』(法律文化社、2018年4月出版予定)に投稿した。本稿は憲法九条と日米安保条約の枠組みを堅持しつつ、冷戦終結後に機能を大きく変容させてきた自衛隊(「存在する自衛隊」から「機能する自衛隊」へ)にとって、憲法九条改正が持つ意味を考察した。加えて、昨年度末に脱稿した「自衛隊の災害救援活動」も片山裕編『防災をめぐる国際協力のあり方』(ミネルヴァ書房、2018年)の一部として出版された。第二に、先行研究や一次資料の収集を継続した。特に占領期から戦後初期にかけての米軍による災害派遣活動(福井地震や新潟地震)に関する貴重な資料を入手したことが大きな成果であった。第三に、研究成果の一部を「大規模災害と日米同盟」として、九州大学主催のワークショップ『日本の安全保障環境』(2018年2月19日)にて報告した(安全保障の専門家や外務省、防衛省担当者も報告)。本報告では国内の災害対応に果たしてきた自衛隊と米軍の役割を歴史的に考察した。また、陸上自衛隊の災害派遣活動の伝統が国際平和協力活動にどのように生かされているのかを考察し、その成果の一部を「再考・カンボジアPKO」として、関西アジア太平洋安全保障フォーラム(駐大阪・神戸 米国総領事館と自衛隊兵庫県地方協力本部が後援。総領事館や自衛隊関係者等が出席)にて報告した。本報告では、安保法制をカンボジアPKOの事例に適用したシミュレーションを行い、その課題や問題点を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の平成29年度は、予定していた論文作成や研究会報告が達成できた。一方、国立公文書館での資料収集やインタビューは、研究代表者の健康上の理由(再度の手術)や本務校の異動等の理由により、計画通りには進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、まず平成29年度に充分ではなかったインタビューと資料収集に力を入れたい。そして、計画通り、「中央レベル」、「地方レベル」、「日米関係レベル」の三層において立体的に進行してきた「国防」と「防災」の交差を分析し、自衛隊の災害派遣を生み出した史的構造を明らかにしたい。その研究成果をいくつかの学会にて報告し、また、出版に向けた準備も進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由) 次年度使用額が生じた理由は、研究代表者の手術および異動により、所期の資料収集とインタビューが充分に実施できなかったからである。 (使用計画) 平成29年度の次年度使用額は資料収集およびインタビューに計上していたものであったから、それは引き続き、平成30年度助成金と合わせて、これらの活動に使用する計画である。
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