2016 Fiscal Year Research-status Report
政治制度が住宅を中心とした都市政策に与える影響の分析
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16K03470
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
砂原 庸介 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (40549680)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 都市政策 / 住宅 / 政党 / 選挙制度 / 政党システム / 地方議会 / 中央地方関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,主に文献のサーベイを中心に研究を進めた。その過程では,日本の住宅システムの特徴を,選挙制度をはじめとした政治制度との関係に注目しながら明らかにすることを意識した。議論してきたこととしては,(1)なぜ人々は都市に住むのかという観点から国や地方自治体の都市政策について検討し,自治体による開発規制の権限が制限されている中で,国を中心としたインフラ整備と地方自治体の市街地活性化が進められてきたこと,(2)これまで政治学では十分に検討されてこなかったマンション管理組合のガバナンスについて論じ,マンションの終末期が近づくなかでマンションから得られる利益の再配分を検討する必要があること,(3)「空き家」や災害による被災住宅について「負の資産」として検討し,これらの問題に対応するためには一種の再分配政策として住宅政策を捉える視点が必要であること,などである。 この成果については,ミネルヴァ書房の月刊誌『究』に,「住まいから都市政治を探る」というタイトルで連載を続けており,2017年6月に終了する予定である。連載が終了した後には,加筆修正を行ったうえで,この成果を書籍としてまとめて出版することを予定している。また,2016年8月に行われた(公財)後藤・安田記念東京都市研究所が主催する『都市問題』公開講座(「誰がためのコンパクトシティ」)では,パネリストとして参加し,本研究の成果をもとにした講演を行った。 先行研究のサーベイと並行して,日本の市レベルの地方自治体についての政治データの収集を行い,それと都市計画や住宅についてのデータの関連を分析するプロジェクトを始めた。まだ始まったばかりのプロジェクトではあるが,2017年3月にトロントで行われたアジア研究学会(Association for Asian Studies)にてこの成果の一部を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に行っている雑誌に連載する機会を得て,文献サーベイを中心とした研究成果を書籍として公刊することができるのは,当初の予想を超えた進展であると考えられる。また,地方自治体に関連するデータの整理を進め,国際学会にて報告できたことも,3年目に予定していた当初の計画からすると早い進展であると評価できる。 他方,予想外に発表の機会を得て,執筆を進めることになったため,データ分析の方法論の習得は予定よりも遅れている。とりわけ地理情報データの活用は今後の研究にとって必須であると考えられるため,2年目に時間をとって精力的に習得を進めることとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
所属する神戸大学から在外研究の機会を受け,バンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学に滞在することができたため,当初予定していたよりも海外都市(バンクーバー)の住宅政策について研究することになったほか,国際交流の機会も増えたことは非常に大きな変化である。在外研究の機会を受けたからこそ成果の発表が進み,早い段階での国際学会への参加も可能となった。この機会を生かし,当初予定していたよりも積極的に国際的な研究交流を進めていくことを考えている。 また,このような変化がある中で,住宅について検討する当初の研究計画に加えて,住宅を求める移民の存在についての研究関心が高まっている。日本においても,近年移民の増加が明らかに加速しており,移民が住宅をどのように取得するか(借りるか)ということは重要な政治問題になると考えられる。そのため,このような関心を取り込むかたちで研究計画を展開することを考えたい。 在外研究に出ているために,日本における出版物や紙ベースでしか存在しないデータを取得できないことは大きな問題である。この点については,一時帰国の機会を検討するほか,日本国内にいる大学院生にRAを依頼するなどして克服することを考えている。
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Causes of Carryover |
在外研究を実施することになったために,予定していた国内出張が大幅に減少したほか,書籍購入などの経費も予定よりも少なくなったことによる。さらに,2017年度に当初は予定がなかった国際学会への参加を計画することになったため,その費用として利用することを考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年8月に開催されるアメリカ政治学会(American Political Science Association)への参加を予定しているほか,2018年3月のアジア研究学会(Association for Asian Studies)も検討している。その他,日本国外からはアクセスしにくい資料やデータの収集のために,リサーチアシスタントを利用することを考えている。
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