2016 Fiscal Year Research-status Report
臨床行政学の提唱~行政現場における「形式的・硬直的対応」問題への対応方策を通じて
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16K03473
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
嶋田 暁文 九州大学, 法学研究院, 准教授 (00380650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 裕亮 北九州市立大学, 法学部, 准教授 (00382408)
澤田 道夫 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (80589078)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 臨床行政学 / レッドテープ / 公平性 / 平等性 / 行政現場 / 理論行政学 / 自治体職員 / 監査社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①研究会の開催、②現地調査、③論文の刊行の三つの作業を行った。 第一に、研究会を1か月半に1度程度、行った。特に、研究協力者として今村都南雄氏を招き、九州大学で開催した2016年7月23日の研究会では、レッドテープ研究の動向について、研究代表者の嶋田が報告し、今村氏を中心にして活発な議論が行われ、極めて有益なものとなった。 第二に、現地調査として、人事評価制度の先進地である筑後市を訪れ、ヒアリング調査を行った。自治体職員の現場対応のあり方は、人事評価のあり方によって規定される面があると思われるため、その影響の有無を把握するために行った次第である。また、グリーンツーリズム、特に農泊をめぐる先進地である宇佐市安心院を訪れ、当初これを違法であるとして認めなかった県がいかにして柔軟な法解釈を行うに至ったのか、当時の町役場職員・河野洋一氏がどのような発想に基づき、どのような行動をしたのかについてヒアリングを行い、確認した。 第三に、論文の刊行を行った。その成果は、下記の業績一覧に詳しいが、たとえば、嶋田暁文「海士町における地域づくりの展開プロセス~「事例」でも「標本」でもなく、実践主体による「反省的対話」の素材として~」(『自治総研』2016年10月号)は、海士町における地域づくりにおいて、自治体職員の思想と行動がどのようなものであったのかを描き出す臨床行政学の実証的研究であると同時に、既存の社会科学方法論への批判とオルタナティブを提示しようとする野心的なものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、「研究のキックオフ」の年度であり、行うべき作業として、(A)行政学理論と社会科学方法論についての文献調査と理論的検討、(B)自治体職員の方々との対話を通じた現地調査(事例収集調査)や文献調査、(C)「形式的・硬直的対応」問題の克服事例についての現地調査(インタビュー調査)、(D)「形式的・硬直的対応」問題を論じた規範的理論研究の検討の四つを挙げていた。 それぞれを担う部会を設け、検討を行ったが、(A)については、その成果の一端として、早くも前述の嶋田論文(「海士町における地域づくりの展開プロセス」)の刊行にたどり着くことができた。 また、(D)の作業を行う「レッドテープ等検討部会」での議論を踏まえて書きあげられた嶋田暁文「レッド・テープ研究の動向と課題に関する一考察~H. カウフマン『レッド・テープ』邦訳公刊を契機として~」が、2017年6月刊行の『季刊行政管理研究』に掲載されることが決まっている。 (B)の作業を行う「事例収集部会」では、初年度には、東京都職員及び都内市区町村職員で構成されている「現代都市政策研究会」を訪れ、彼(女)らから事例を学ぶ予定であったが、熊本地震の発生により、メンバーの一人である澤田道夫の都合がなかなかつかなかったため、2016年度中には間に合わなかった。しかし、2017年6月25日に行うことが決定しており、予定が遅れたにとどまる。 (C)については、前述の筑後市調査のほか、嶋田個人として、グリーンツーリズムをめぐる先進地である宇佐市安心院を訪れ、県による柔軟な法解釈を勝ち取ることができた経緯を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目に当たる2017年度は、「研究の深化」の年度である。 初年度に構築した部会体制の下、四つの部会を運営し、議論を深める。 特に、「行政学方法論検討部会」では、「臨床行政学」の発想の源泉にあるD.ワルドーによる「プロフェッショナル・アプローチ」の再検討を行う。ワルドー自身が、プロフェッショナル・アプローチに対して否定的な立場に転じたこと(Waldo, D.(1988)“Book Review :The End of Public Administration”PAR, Vol.48. No.5)をどう受け止めるかは、本研究の趨勢を大きく左右するからである。 また、現地調査については、どうしても他の所要が優先してしまいがちなため、予定を早めに組んで、確実に調査を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
熊本県立大学の澤田道夫につき次年度使用額が生じたが、これは、熊本地震の発生により、研究室の使用がままならず、またその後のさまざまな対応・処理のために、時間を要したため、当初予定していた出張ができなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度6月25日に、当初予定していた東京での現代都市政策研究会との合同研究会を開催し、その際の出張費に充てる。
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Research Products
(8 results)