2017 Fiscal Year Research-status Report
臨床行政学の提唱~行政現場における「形式的・硬直的対応」問題への対応方策を通じて
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16K03473
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
嶋田 暁文 九州大学, 法学研究院, 准教授 (00380650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 裕亮 北九州市立大学, 法学部, 准教授 (00382408)
澤田 道夫 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (80589078)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 臨床行政学 / レッドテープ / 公平性 / 平等性 / 行政現場 / 理論行政学 / 自治体職員 / 監査社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①研究会の開催、②自治体職員意識調査、③論文の刊行の三つの作業を行った。 第一に、研究会を1か月半に1度程度、行った。特に、2017年6月25日に、東京都職員及び都内市区町村職員で構成されている「現代都市政策研究会」との合同研究会を東京で開催し、現場の自治体職員の皆さんとの議論を交わすことができたのは極めて有意義であった。 第二に、自治労福岡県本部との合同で自治体職員意識調査の結果をとりまとめた。本調査は、2017年1月20日から2月20日までの1か月間にわたって実施したものをとりまとめたものである。調査対象者は、自治労福岡県本部に所属する組合員(自治体職員)1,075名である。回収された調査票から無効票 を除外し、最終的に1,033名から有効な回答を得た(有効回答率96.1%)。次に、回答を得られた。その成果は、自治労関係の研究会の場で発表しているが、今後より一般的に発信するため、論考を公刊する予定である。 第三に、論文の刊行を行った。その代表的成果は、嶋田暁文「レッド・テープ研究の動向と 課題に関する一考察~H. カウフマン『レッド・テープ』邦訳公刊を契機として~」(『季刊行政管理研究』158号(2017年6月刊行)である。本研究は日本初の本格的なレッドテープ研究の体系的な紹介論考となっており、官僚制研究に大いに貢献するものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、「研究の深化」の年であり、(A)行政学理論と社会科学方法論についての文献調査と理論的検討、(B)自治体職員の方々との対話を通じた現地調査(事例収集調査)や文献調査、(C)「形式的・硬直的対応」問題の克服事例についての現地調査(インタビュー調査)、(D)「形式的・硬直的対応」問題を論じた規範的理論研究の検討の四つの作業を行う各部会を運営し、議論を深めていった。 たとえば、(B)については、前述の通り、2017年6月25日に、東京都職員及び都内市区町村職員で構成されている「現代都市政策研究会」との合同研究会を東京で開催し、現場の自治体職員の皆さんから「形式的・硬直的対応」問題の克服事例を提供していただいた。 (C)については、メンバー各自でそれぞれに行った。たとえば、嶋田に関しては、徳島県上勝町、神山町、兵庫県篠山市、沖縄県那覇市、大分県宇佐市、山梨県甲府市で、自治体職員の方々との意見交換を行った。また研究会に山梨市の職員、磯村賢一氏を招き、議論を交わしたのも有益であった。 (D)については、その成果として、嶋田暁文「レッド・テープ研究の動向と課題に関する一考察~H. カウフマン『レッド・テープ』邦訳公刊を契機として~」を公刊することができた。 ただし、(A)については、D.ワルドーによる「プロフェッショナル・アプローチ」の再検討を行う予定であったが、これを行うことができなかった。これは、主として、メンバーの一人である森裕亮の留学のタイミングが重なり、年度末の研究会の開催ができなかったためである。今後の対応としては、新年度早々の研究会で上記ワルドー論考の検討を行い、遅れを取り戻したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
3 年度目に当たる平成30 年度は、「研究の統合化」の年度である。 当初の計画では、「平成28・29 年度に行った四つの部会の研究成果を統合しながら、集約し始める。具体的には、「形式的・硬直的対応」問題を類型化した上で、類型に応じた克服方策を示す研究をとりまとめ、平成30 年5 月に開催される日本行政学会に公募企画として応募し(担当責任者:森裕亮)、研究成果の中間的な発信を行う」としていた。しかしながら、研究代表者である嶋田が、日本行政学会二日目の共通論題Ⅱ「行政管理・人事行政と『働き方改革』」で報告をする機会を得るという僥倖に恵まれることとなり、より広範に中間成果の発信をすることが可能になった。 この機会を活かし、学界に本研究の中間成果を伝えるとともに、前年度に引き続き、四つの部会の作業を進め、かつ、「統合化」を進めていくことにしたい。
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Causes of Carryover |
まず、澤田道夫については、資料作成用パソコン用のソフトおよび研究関連書籍の納品が時間を要し、年度を超してしまう可能性が生じたため、当該支出分については繰越処理を行い、改めて次年度に執行することとした。当該次年度使用額にかかる経費については、平成30年度に本学会計システム上で予算執行が可能になり次第、平成30年度予算と併せて速やかに執行する予定である。 次に、森裕亮については、平成30年度は、海外に拠点を移し(大学の長期研修、オーストラリア)本研究のプロジェクトを進める予定である。それに伴い、海外における研究活動において必要な資材等の購入が必要と推測された。平成30年度においては、日本との比較の視点を用い、オセアニアにおける行政公務員の人事、働き方に関する調査を行うため、その遂行に必要と考えられる資材を購入する予定である。具体的には、ICレコーダ(テープ起こしに使用するため)、現地における資料等の印刷費、加えて必要な図書費である。
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Research Products
(10 results)