2016 Fiscal Year Research-status Report
帝国・君主・コモンウェルス-初期近代ブリテンの経験と記憶を探る
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16K03474
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木村 俊道 九州大学, 法学研究院, 教授 (80305408)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 帝国 / ジェイムズ1世 / フランシス・ベイコン / ジョン・デイヴィス / 複合国家 / アイルランド / マキァヴェッリ / ホッブズ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、初期近代ブリテンにおける君主や顧問官・行政官の統治論を考察の対象とし、とくに彼らの「帝国」論について研究を進めた。そのうち、ジェイムズ1世期における複合国家統治論については、2016年12月に京都大学で開催された複合国家研究会における報告の後、2017年3月にヘルシンキ大学のペルトネン教授を招いて九州大学で開催したセミナーにおいて、英文報告 Orpheus' Theatre: Civility and Empire before the British Revolutionとしてまとめられた。それらの報告では、イングランドとスコットランドの統合やアイルランドの植民に際して、国王ジェイムズ1世(6世)や顧問官のフランシス・ベイコン、アイルランド法務長官のジョン・デイヴィスらによる帝国論や文明論、複合国家統治論の展開が明らかにされた。なかでも、ジェイムズにおける君主論の持続、ベイコンによるアイルランド論の展開、ディヴィスの統治論における詩の重要性について新たな発見があった。 今年度はまた、次年度に予定されていた、初期近代英国政治思想史コレクションの調査を前倒しで実施した。マキァヴェッリ『ディスコルシ』英訳初版や『ディスコルシ』『君主論』合冊版をはじめ、ベイコンやホッブズなどを含むオリジナル資料の調査を通じて、マキァヴェッリの受容の過程と、それに伴う人文主義的な政治学の、17世紀における通時的・持続的な展開が明らかとなった。これに関しては、6月に九州大学で開催された政治研究会での報告に加え、「マキァヴェッリ、ベイコン、ホッブズの周辺―初期近代英国政治思想史コレクション 1605-1700」と題した資料紹介を『政治研究』第64号に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、当該年度の研究計画はその多くについて進展が見られ、英語での報告を含む複数の機会を通じて、その成果の一部が発表されている。とくに、当該分野を代表する研究者の一人であるヘルシンキ大学のペルトネン教授から、今後の研究を進めるうえで重要なアドヴァイスを得ることができた。 さらに、当該年度においては、次年度に予定されていた計画の一部(初期近代英国政治思想史コレクションの調査)が前倒しでなされ、その成果を報告するとともに、雑誌(『政治研究』)に資料紹介を記載し、公開することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1年目の作業を踏まえ、2年目に予定されている研究を進めるとともに、それらを発表・報告する機会として、とくに5月(日本哲学会)と9月(日本政治学会)に予定されている学会発表に向けて準備を行う。
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Causes of Carryover |
注文した洋書の出版が延期となり、当該年度中の執行が出来なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
出版が延期となった書物を購入する。
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