2016 Fiscal Year Research-status Report
初期近代スペインにみる「キリスト教君主」論―反マキァヴェリズムの系譜
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16K03481
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
松森 奈津子 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (80337873)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サラマンカ / ビトリア / スアレス / マキァヴェッリ / 反マキァヴェリズム / カトリック / スコラ / 君主の鑑 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題代表者の研究の全体構想は、インディアス(新世界)問題や対抗宗教改革を通じて展開した初期近代スペインの政治理論を考察することにより、国家理性論や社会契約説に偏った従来の西洋初期近代理解の修正を試みるものである。 この構想の下、本研究は、ビトリアからスアレスに至る思想家が、統治者のあるべき姿を追究する過程で精緻化した「キリスト教君主」論の特質と意義を解明する。「キリスト教君主」論は、ヘンリー8世婚姻無効擁護論やマキァヴェリズムに対する反論として、世俗権力は宗教権力から自律してはいるが、カトリシズムに基づく法と正義を尊重すべきだと主張する理論である。本研究はこの理論の考察を通じて、初期近代が内包していた脱中世型政治共同体探究の豊かなヴァリエーションを明らかにすることを目的としている。 研究開始年度となる本年度は、申請時の計画では、「キリスト教君主」論展開の主要因となったヘンリー8世婚姻無効擁護論批判と反マキァヴェリズムをめぐる資料調査・解釈期間として位置づけられていた。この計画に基づき、研究書の附録、雑誌論文、当時の諸版、手稿本の形で散在しているラテン語・カスティリャ語原典、ならびに英語、スペイン語を中心とする最新の先行研究を調査し、それらの読解をすすめた。 当初の計画では資料調査と読解までであったが、依頼報告の形で研究成果をまとめる機会をいただいたこともあり、学術論文2本、口頭報告1本の成果を公にすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画では、本年度は資料収集と読解のみの予定であったが、結果として学術論文や口頭報告の形で研究成果を公にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定よりも研究の進度が進んでいるため、このまま申請時の計画を前倒して研究を進めていく予定である。 来年度は、当初2年目に行う予定であった婚姻無効擁護論批判をめぐる執筆、3年目に行う予定であった反マキァヴェリズムの系譜と特質をめぐる執筆を進めることを予定している。
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Causes of Carryover |
年度内に海外に発注した書籍が年度内に納品・検収されなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに発注済なので、納品され次第、執行予定である。
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Research Products
(3 results)