2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03483
|
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
苅田 真司 國學院大學, 法学部, 教授 (30251458)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | アメリカ社会科学 / マッキーバー / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度前半は、前年までに収集した資料の分析を中心として作業を進めた。また、海外で新たに公開されたものを含めて、オンライン資料の収集も進めた。マッキーバーに関する新たな研究は、国内外ともに現れなかったが、20世紀の社会科学の発展過程をめぐる重要な論考がいくつか発表されたため、その内容の解析を行った。そして、新たに公開された資料と研究を踏まえて、すでに行っていた研究内容の見直しを行った。特に、20世紀前半における「社会的因果性」の観念をめぐって、理解の深化が図られた。 2019年度後半は、前半期に行った資料の分析をふまえて、2017年度の研究発表「アメリカ時代のマッキーバー」を論文の形にまとめる作業を中心に行った。コロンビア大学における人的な継承関係が、単なるエピソードではなく、コロンビア大学内における社会科学に関する考え方の対立の反映であったことを、一次資料を含む当事者たちの直接間接の議論を通じて、一定程度明示的に論じた。この論文によって、1930年代のコロンビア大学の社会科学観を明らかにするとともに、アメリカにおける社会科学観の対立の一端を明らかにし、1930年代におけるアメリカ社会学のさまざまな理論的・人的対立の説明に一定の貢献ができたものと考える。また、ロバート・K・マートンとパウル・ラザスフェルドを中心とする、後のコロンビア学派の形成とその特質についての一視角を提供することもできたと考える。この論文については、2020年度中に公刊する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度中に海外図書館等が所蔵している一次資料を調査する予定であったが、その前提となる収集済みの資料に関して、考慮すべき新たなオンライン資料及び重要研究が出たため、その成果を組み入れつつ分析をし直した結果、作業が予定よりも遅くなった。 それに加えて、年度末にかけては、コロナ・ウィルスの影響により、海外図書館への直接のアクセスが著しく困難になったため、一次資料の調査を後回しにする形で、研究計画を作成し直さざるを得なかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
国外での資料調査の準備は整っているが、コロナ・ウィルスの影響により、短期での資料調査が可能かどうか、なお不透明なところがある。年度前半まで情勢を見極めた上で、場合によっては、年度後半からは一次資料を使用しない形で研究計画を再編成したい。 国外資料調査を除いては、成果発表の段階にさしかかっているので、今年度中および次年度以降に公表する成果論文の執筆を進める予定である。現時点では、コロンビア時代のマッキーバーの理論的な全体像を扱った論文と、同時代のマッキーバーの人的な関係を中心として扱った論文の日本の公表を予定している。前者については、すでに執筆済みの「アメリカ時代のマッキーバー」に時代的には先行する形で、因果性論を中心にマッキーバーの思考の発展過程を論じる予定である。後者については、同論文で取り上げたロバート・リンドとの関係を中心に、1930年代のコロンビア大学の社会科学像を分析する予定である。
|
Causes of Carryover |
国外資料収集のための旅費が申請してあったが、新たなオンライン資料の発見と重要研究の出版のため、資料収集の前提となる分析作業が遅れたこと、及び、コロナウィルスの影響で短期での資料収集が困難になったことを受けて、旅費分の支出が次年度に繰り越しになっています。 次年度においては、コロナ・ウィルスによる影響を見ながら、国外における短期での資料収集が可能かどうかを7月までに判断する。国外での資料収集が困難である場合には、研究計画を組み替えて、国内にある資料を収集・分析するための旅費及び物品費に充てることで、できる限り当初の研究目的の達成を図りたい。
|