2016 Fiscal Year Research-status Report
アメリカのマイノリティと政治変動:理念、連邦制、社会統合政策
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16K03485
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
西山 隆行 成蹊大学, 法学部, 教授 (30388756)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アメリカ政治 / マイノリティ / 移民問題 / トランプ現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度はアメリカ大統領選挙が実施され、民主・共和両党が移民問題をめぐって積極的な議論を展開した。中でも、ドナルド・トランプなどの保守派の共和党候補が反移民・反不法移民を標榜する過激な議論を展開した。共和党内でも穏健派の議員は移民容認の立場を示し、民主党議員とともにトランプと議論を繰り広げた。移民国家アメリカのナショナル・アイデンティティの在り方と関連させて社会統合をめぐる理念が提示、議論されたため、それを検討するとともに、移民統合の理念と移民に対する反発の矛盾が顕著に表れる国境・出入国管理政策について検討した。 具体的には、中南米系の移民(合法・不法共に)の流入をめぐり、様々な議論が展開され、それに対する保守的な白人有権者の不満にどう対応するかが2016年大統領選挙の一大争点となった。米墨国境の壁の建設をめぐる問題に加えて、移民などのマイノリティが受給していると保守派によって主張された様々な社会政策との関連について大統領選挙の際に議論が戦わされたため、それらについての分析を行った。また、大統領選挙の結果、アメリカの二大政党政治がどのように変化する可能性があるかについて、仮説的な検討を行った。トランプ現象との関連で、移民問題とポピュリズムの関係についての理論的検討も実施した。 トランプ政権就任後、新大統領はテロリストと関係があるとされるイスラム教の国々からの移民・難民受け入れを停止する大統領令を出したが、その妥当性や効果についての検討も実施した。 このように、2016年度はアメリカの連邦政界の次元に着目して、移民に代表されるマイノリティがアメリカ政治をどのように変えたのか、また変えなかったのかを検討する研究を行い、その成果を著書・論文等で発表するとともに、その成果を講演等で学会のみならず社会に還元した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年アメリカ大統領選挙に際し、研究計画書作成時に今後起こりうると想定していた論争が、想定以上の規模で発生した。そのため、アメリカ合衆国での現地調査に加えて、文献資料なども十分に渉猟することができ、その研究成果を学術書、学術論文、また各種講演等の形で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度に行った連邦政府に関する調査結果を踏まえ、2017年度にはマイノリティの社会統合政策が州や地方政府でどのように実施されているのか、歴史的背景なども踏まえながら調査を行う。資料・文献調査に加えて、アメリカ合衆国での現地調査も実施する。中でも、米墨国境地帯の州・地方政府がどのような国境管理策を実施しているのか、また、移民などのマイノリティが多く居住している地方政府がどのような社会政策を実施しているのかについて調査を行う。なお、トランプ政権が不法移民取り締まりを厳格に実施しない、いわゆる聖域都市に対する補助金削減を実施しようと試みているため、その動向も踏まえながら研究計画を随時変更することになる。 また、2018年度には連邦で中間選挙が実施されることから、2017年度中にそれに向けての動向調査も併せて実施する。2018年度以降の研究計画については、中間選挙の動向によって大きく変化する可能性もあるが、連邦レベル、州・地方レベルでのマイノリティをめぐる政治の展開の相違を念頭に置きながら、資料・文献調査、現地調査、論文執筆などを行っていく。
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Research Products
(12 results)