2016 Fiscal Year Research-status Report
自民党政権「形成期」における政府与党関係の研究―事前審査制はなぜ定着したのか?
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16K03486
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
奥 健太郎 東海大学, 政治経済学部, 教授 (10512634)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自民党 / 政務調査会 / 事前審査制 / 自民党政権 / 調整 / 政策決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、自民党政権の事前審査の定着過程を、定量的手法と定性的手法、さらに海外との比較も視野にいれて分析する計画である。 本年度、定量的分析の関連作業としては二つのことを行った。第一は、『衆議院公報』の会議情報の入力である。具体的には1950年代後半の自民党政調会の会議情報を日付ごと、会議体ごとに入力した。これにより、自民党政調会の活動実態の数的に分析することを目指している。第二は、政調会の人事情報の入力である。これまで1950年代後半の政調会の人事は、深いレベルで分析されてこなかった。しかし『衆議院公報』等の同時代の資料を用いれば、人事情報が詳細に把握できるので、本年度この入力を行った。そして、この情報を議員の経歴、所属派閥等と関連づけて分析していけば、この時代の自民党政権像を修正する像を抽出できると考えている。 定性的分析に関しては、高田浩運日記、坊秀男日記の解読、入力を系統的に行った。この作業は、官僚からみた事前審査、政治家からみた事前審査の実態をそれぞれ浮彫にするために不可欠の作業である。高田日記の分析からは、この時代の官僚と政調会の接触の実態や政調会の機能の解明が期待できる。一方坊日記は高田日記に比して記述量は少ないものの、50年代後半坊が政調会副会長を務めていたため、決定的に重要な記述が散見された。 比較のための研究活動としては、イギリスの政策決定過程の文献調査を行った。特に党の一体性、規律、調整、凝集性の概念を強く意識しながら、イギリス政党政治の研究をフォローした。特にイギリス政党政治の近年の変容は、自民党政治分析に大きなヒントになるという着想を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『衆議院公報』の会議情報の入力は、当初の予想よりも難航している。それは政調会の会議体の種類が当初の想定以上に多様だったためである。そのため2017年度内の入力作業は、当初の計画の半分程度に留まっている。 一方、人事情報の入力は、アルバイトを雇用して機械的に入力することが可能だったため、予想通り入力が終了した。 高田日記、坊日記の入力も当初の想定通りに進捗している。 海外との比較に関しては、イギリス政党に関する研究論文を読み込むことにより、研究開始前に想像していなかったような着想を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には2017年度も2016年度の研究活動を継続していくが、基盤作業は順次終了しつつあるので、活動の主体は分析に移行する予定である。 ただしイギリス政党研究は、申請者の語学力の問題もあって進捗の速度は決して早くない。この点が一つの課題として残されている。
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Causes of Carryover |
主たる理由は、物品費として想定していなかったノートパソコンを購入する必要性が急遽生じたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ノートパソコンのような高額な物品への支出は、今後はないと考えられるので、およそ計画通りの支出となることが見込まれる。
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Research Products
(2 results)