2018 Fiscal Year Research-status Report
自民党政権「形成期」における政府与党関係の研究―事前審査制はなぜ定着したのか?
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16K03486
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
奥 健太郎 東海大学, 政治経済学部, 教授 (10512634)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 事前審査制 / 自民党政調会 / 特別委員会 / 保守党 / 労働党 / 党内委員会 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の研究実績としては第一に、前年度より取り組んでいる『衆議院公報』を用いた政調会の定量的分析がある。これは、1956年から64年までの政調会の会議量、開催パターンを数量的に分析したもので、これにより事前審査制の定着の時期が1958年から59年にあったという結論を得た。またその定着を促進した要因について仮説を提示した。この研究については、2018年5月の日本選挙学会において口頭発表を行い、さらに『選挙研究』2018年2号の中で論文として発表した。 第二に、日英の比較研究を前年度(2017年度)に引き続いて行った。2017年度はイギリスにおいて、保守党の党内委員会の歴史を調査してきたが、2018年度は労働党の党内委員会の調査も行った。ここでの目的は、保守党と労働党の党内委員会を自民党の政調会と比較史的に分析することで、事前審査制の出現と定着の要因を考察することにあった。論文はすでに出来上がり学会誌に投稿したが、査読を通過するに至らなかった。しかし、レフリーから有益なヒントを得たので、今後リサーチデザインを変更し、再度投稿する予定である。 第三に、2018年度から開始した作業としては、自民党政調会の特別委員会の分析がある。これは上に記した政調会の定量的分析から、事前審査制の定着に特別委員会の設置、拡大が大きく関係していると考えられたからである。今のところ、高田浩運日記、加藤鐐五郎日記、野田卯一日記、坊秀男日記を読み進めながら、特別委員会の実態の把握を急ピッチで進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述したように、自民党政調会の定量的な分析は、具体的な研究成果を挙げることができた。事前審査制の定着の時期ついて、数量的に論証できたことは、本研究課題の根幹部分に関する重要な成果と考えている。 しかしながら、国際的な比較の中で日本の事前審査制を位置づける作業は、学術論文という形で公表するに至っていない。このことが「やや遅れている」と判断する理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
比較の中の事前審査制という課題については、これまで日英の二か国間比較というリサーチデザインにこだわり過ぎたのかもしれない。シンプルに保守党、労働党の党内委員会の実態分析だけでも学術的な意義があると考えを改め、目下、イギリス滞在中に収集した資料をもとに論文を再執筆中である。これが完成すれば、現在抱える課題を解決できると考えている。 事前審査制の定性的分析については、日記等の一次資料に恵まれ、また政調会の会議情報の入力も終了しているので、両者を融合させていけば、先行研究とは異なる次元で事前審査制の定着プロセスとその要因を論証できると考えている。
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Causes of Carryover |
政調会の定量的分析について、一部アルバイトを雇用してデータ入力、計算を依頼することを予定していたが、データが予想外に不規則・不定形であったために、自ら入力等の作業をせざるをえなかった。そのため人件費に余裕が生じた。 2019年度は『衆議院公報』の複写等、アルバイトで対応できる作業もあり、人件費に一定額の使用が見込まれる。また比較研究が完成していないために、海外(英国)出張の可能性もある。人件費と旅費を活用して、4年間の研究計画を完遂したい。
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Research Products
(2 results)